第8話
「おはようございますアルさん」
「あら、おはよう。朝ごはんできてるわよ?食べてくでしょ?」
「「「「いただきます!!」」」」
朝食を取りながら今日の予定について話し合う。
「俺は早くダンジョンに行ってみてえなー」
「でもダンジョンに行く前にある程度戦闘に慣れとけって師匠は言ってたよね。」
「そうね、まずは街の周辺でできるクエストがあったらやっていきましょう」
「よし、じゃあ冒険者登録をして余裕があれば今日クエスト受けてみようか。お金も余裕は全くないし」
「そうと決まれば早速行こうぜ!!!」
俺たちはアルさんにお礼と1週間分の宿代金貨7枚を払って宿を出た。かなりでかい出費だ。ふう、懐がかなり寂くなる…
必要経費だから仕方ないが、これはますますクエストを受ける必要性が出てきたな。
俺は宵越しの銭は持つ主義だ!!
昨日シルさんに教わっていたので、迷うことなく冒険者ギルドにつくことができた。
外観は、周りの建物と差異はないが、屋根に真っ赤なドラゴンが載った大きな旗があるのが特徴的だ。
これが冒険者ギルドのロゴらしい。
冒険者になるのはとても簡単だ。
成人していて犯罪歴さえ無ければなることができる。
中に入ると、クエストボードと言われる大きなボードと、受付所があるだけの簡易的な作りだった。そして、受付嬢!!!はいなくて強面の男性が3人、受付所に座っていた。
悔しがっていると、レナがまた睨んでいた。
最近こんなのばっかだな…
「よっしゃ、さっそく登録しようぜ!!」
はしゃぐライエルが入り口に1番近い位置にいた強面の男性の元に駆け寄っていく。
俺はナイス!!と思いながらライエルについて行った。レナも睨むのはやめてくれたようだ。怖いんだよな、あの目…
「おっちゃん!俺たち冒険者登録したいんだけどできるか?」
ライエルが聞く。
「兄ちゃん達歳はいくつだ?」
「全員15だ」
「それなら問題ない。こっちの書類に必要事項だけ書いてくれ。文字はかけるかい?」
「大丈夫です」
書類を受け取り、必要事項を書いていく。
「兄ちゃん達は田舎から出てきた口かい?」
「ええ、そうです。でもどうしてわかったんですか?」
レナが聞く。
「ここは冒険者の始まりの街なんて呼ばれてるからな、姉ちゃん達みたいのはよく来るんだよ。大体諦めてやめてくか、成長したら別の街に行っちまうから、ここには新人と拗らせ冒険者しかいないんだけど」
なるほど、ここは新人が多く来るんだな。新人向けのクエストも多そうだ。
「俺はジョーていう名前でな、受付ジョーって呼ばれてんだ、兄ちゃん達は諦めずにコツコツ頑張れようー」
ガッハッハハと豪快に笑いながらも手慣れた様子で書類を捌く。
なんというか、言動が見た目通りすぎて、ゴードンに見習わせたい。
「よし!これで兄ちゃん達も立派な冒険者だ。ギルドカードの発行まで少しばかり時間がかかるが、ちょっとしたクエストでも受けていくかい?」
「お願いします。それと魔石持ってるですけど換金もお願いしていいですか?」
「お!もう魔物倒してんのかい。こりゃ将来有望だな!!勿論問題ないぜ、他にも剥ぎ取ったもんがあるなら見せてくれ」
俺はテーブルに魔石2個と牙を4つ、使えそうにない短剣2本を置く。
「この牙は、ゴブリンだな。テミア周辺ではよく見る魔物だ、気を付けろよ。よし、換金してくるからクエストでも見ててくれ。あんまり危ないの選ぶなよ。コツコツが大事だコツコツが。」
「はい!ありがとうございます。それとそのゴブリンなんですけど、テミア周辺じゃなくて
街道を馬車で半日ほどの場所に出たんですよね。」
「なに!?それは本当かい?兄ちゃん達」
やっぱりあの場所で魔物が出るのはイレギュラーな事だったようだ。
「おう!クロノン商会のシルヴィーって人が襲われていた所に出くわして助けてやったんだよ!」
「なるほど、ありがとよ兄ちゃん達!これからもそういう普通じゃねえ事が起こったら報告してくれると助かる。この件についてもギルマスに報告してくるからまっててくれ。換金は勿論色つけとくからよ」
そう言ってジョーさんはおくの部屋に入っていった。
俺たちはクエストボードを見る。
始まりの街らしく難易度の高いクエストは少ない。
薬草の採取
場所:テミア周辺
報酬:1キロにつき金貨1枚
・ポーションを作るための薬草を取ってきてください
爪モグラの討伐
場所:チコ村
報酬:1匹につき金貨3枚
・畑を荒らされて困っています。いつ爪モグラが現れるかも分からず家から出れません。爪モグラは2匹確認しています。よろしくお願いします。
などといった具合だ。
薬草採取は危険は少ないが明らかにコスパは悪い。
一方で、魔物討伐は依頼書に言及されていなければ、報酬とは別に魔石や素材を換金することができる。
ダンジョンではそれに加えて、宝箱による一攫千金も狙える。なぜ、宝箱が出るのかなど詳しい事は何も分かっていないと師匠が言っていた。
「この爪モグラの討伐にしようぜ!!」
「僕も、魔物討伐がいいと思うな。薬草採取も大事だとは思うけど、成長はできなそうだよね」
「私もゴードンに賛成よ。爪モグラでもいいけどカイはそれでいい?」
「このチコ村ってのがテミアから1日で行けそうなら賛成かな?宿屋のお金も払っちゃったし、この辺りで野宿は魔物も出るしちょっとしたくない」
「そうね、ジョーさんが戻ってきたら聞いてみましょ」
とりあえずの方針を決めて他のクエストも見てみる。
ドラゴンの討伐
場所:不明
報酬:白金貨300枚
・ドラゴンの討伐
ドラゴン…やっぱり英雄ならこういうクエストだよな。今の俺たちとは程遠いけど。
「よーう兄弟!新人か?ドラゴンに興味あんのかい?」
俺がドラゴンの討伐クエストの紙を見ていると、冒険者らしき同い年くらいの男が俺の肩に手を置いて話しかけてくる。
「ええ、今日冒険者になったカイって言います。」
「なんだよ堅苦しいのは抜きにしようぜ!タメ口でいいよ俺たち兄弟だろ?」
なんだこの人馴れ馴れしすぎだろ。俺は名前も名乗らないこの男をどう扱えばいいのだろうか…
「おいやめとけよレスター」
助け舟を出してくれたのは無表情な少女を連れた同い年くらいの少年だった。
「なんだよロイ!ただ挨拶してただけだよ!なあ?」
「ええ、まあ」
「すまないね、こいつが迷惑かけたみたいで。俺はロイ。こっちがレビィでそっちのがレスターっていうんだ。俺たち3人でパーティーを組んでてね。見たところ新人かな?俺たちも新人なんだ仲良くしよう」
そう言って手を差し出してくる。俺は同じように手を差し出した。
「ああ、今日冒険者登録したんだ。俺はカイ。よろしくな」
「俺はライエルってんだ」
「ぼ、僕はゴードン」
「私はレナよ。よろしく」
「おう、兄ちゃん達換金が終わったぜい!」
一通り自己紹介が終わったところでジョーさんが声をかけてくる。俺はロイ達に「またな」と声をかける。
「なんだ兄ちゃん達あいつらと知り合いなのかい?」
「いえ、何というかそこで絡まれて…」
「ああ、そういうことかい。あいつらも先日冒険者になったばかりでな、期待の新人なんて呼ばれてやがる。かわいくねえ奴らだよ。兄ちゃん達の方がよっぽど好きだぜ俺は」
ジョーさんはロイ達の事をあまりよく思ってないみたいだった。まあ、あのレスターってのは俺も苦手だけど。
「おお、そうそう換金だったよな。魔石が2つで金貨1枚。牙と短剣が銀貨40枚で情報料として銀貨60枚。締めて金貨2枚だ。
「ありがとうございます!」
これが多いのか少ないのかはちょっと分からない。普通に考えたら多いんだろうけど、命がかかってる事を考えるとあまり多くも思えなかった。
「それでクエストは何かいいのがあったかい?」
「それなんですけど、チコ村ってここからどのくらいですか?」
「チコ村か、ここから急げば3時間ってとこだな」
「ならこれでいいよな?おっちゃん、これ受けるぞ」
ライエルが依頼書をジョーさんに渡す。
「爪モグラか、悪くない選択だな。脅威度的にもゴブリンとかわんねえし。お前たちパーティーだろ?申請しとくからリーダーだけ教えてくれ」
「リーダーだったらカイにしといてくれ!」
ライエルが迷わずそう答える。
「おい!勝手に決めんなよ」
リーダーなんて責任重大な役前世合わせて1度もやった事がない。
「じゃあ何でだよ!?お前以外だれがやんだよ」
「僕もカイくんでいいと思うよ?」
「そうよ、カイしかいないじゃない!」
「俺も兄ちゃんなんだと思ってたんだが違うのか?」
みんなの中では俺一択だったらしい。ジョーさんまでもが。嬉しくないと言ったら嘘にはなるが、俺がリーダーなんて不安でしかない。
「分かったよ。その代わり基本的な事はいつも通り話し合って決めるってことで」
俺は基本的なスタンスを変えない事を条件にリーダーを引き受けた。
「おし、兄ちゃんがリーダーって事で申請しとくからよろしくな。クエストも受理しといたから、村に着いたらこれを見せてくれ。そんで、依頼を達成したらサイン貰うの忘れんなよ。報酬払えなくなるからな。気をつけて行ってくるんだぞ」
「ありがとうございました!行ってきます!!」
「よっしゃあ!冒険譚第2章”初めてのクエスト”開幕だ!!」
おっと、ライエルさん?勝手に気に入って人がかけた封印を解くのやめてもらいますか???
俺はつい昨日の黒歴史を思い出しながらチコ村に向かった。
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