第102話 過去の記憶
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高校の入学式を終え、担任の長い話を終えた後、帰ろうと立ち上がると、隣の席の男の子も立ち上がりこちらを向き、笑顔で言ってきた。
「俺、中島雄吾っていうんだ。よろしくね」
そう言いながら、笑顔で右手を差し出されたんだけど、「はぁ…」としか言えなかった。
するとユウゴくんは、私の腕を掴み、強引に握手した後「じゃ、そういうことで」と言い、教室を後にしていた。
その姿を見た静香が「何あれ?」って聞いてきたけど、「さぁ?わかんない」としか言えず、何も気にしないで教室を後にした。
静香と話しながら駅に向かっていると、背後から「はぁ!?」と言う男の子の声が聞こえ、振り返ると数人の男の子たちが固まり、その中で笑顔のユウゴ君が、知らない男の子に肩を殴られていた。
『さっきの人だ…』と思いながらも、見て見ぬふりをし、駅に向かって歩いていた。
翌週、隣のクラスで、同じ塾に通っていた『明日香』が「一緒にバスケ部のマネージャーやらない?」と言ってきた。
静香にも声をかけていたんだけど、静香は「私、野球部のマネージャーやるから無理」と断ったため、明日香と二人でバスケ部のマネージャーに。
マネージャーを始めてから数日経つと、ユウゴ君と、この前、ユウゴ君の肩を殴っていた男の子がバスケ部に入部してきた。
ユウゴ君はこの男の子と一緒に行動し、『仲が良いんだなぁ』くらいにしか思っていなかった。
けど、その子がスリーポイントシュートを打った時、窓から差し込む光に汗が反射され、すごく綺麗フォームしていたせいか、一瞬だけ目を奪われてしまった。
綺麗なフォームで放ったシュートが外れると、ユウゴ君が「大地下手すぎ~」と大声で言い、大地君は「うっせー」と大声で言っていた。
『大地君って言うんだ…』
そう思いながら、ほんの少しだけ、胸が締め付けられるような感覚に襲われていた。
その数日後、選択科目の授業の時に、隣の席には隣のクラスの男の子が座っていた。
授業中、その子はノートの端に、教師の似顔絵をいたずら書きをしていたんだけど、そのいたずら書きがすごく特徴をとらえていて、思わず「凄い…」と小声で言ってしまった。
その子は照れ臭そうに笑った後、「似てない?」と小声で言ってきた。
小声で「そっくり」と言うと、その子はまた照れ臭そうに笑い、ペンを走らせていた。
授業を終え、教室に帰る途中、隣に座っていた男の子が「今度似顔絵書いてあげようか?」と話しかけてきた。
「恥ずかしいからいいよ~」と、話しながら廊下を歩いていると、廊下の向こうから大地君が「けいすけ~、数学の教科書貸してくんね?」と言いながら歩いてきた。
ケイスケ君が「はぁ!?また忘れたんかよ?」と言い、大地君が「鞄重くなるだろ?」と答える。
二人の会話を邪魔したら悪いから、黙ったまま足早に教室へ戻った。
その日から、選択科目の時にはケイスケ君と話すようになったんだけど、隣の席のユウゴ君は、ほとんど寝ているばかりだったし、大地君は違うクラスだから、話すことはなかった。
部活は同じなんだけど、ほとんど明日香と一緒に居たし、マネージャーは基本的に雑用ばかり。
買い出しに行ったり、雑巾やタオルを洗ったり、スコアブックを清書させられたりと、部員とはほとんど別行動をしていた。
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