第103話 過去の記憶 ー2
学校生活にも慣れ、マネージャーの仕事も大体把握してきた頃。
廊下で明日香と話していると、急に誰かがぶつかってきて、壁に打ち付けられそうになってしまったんだけど、何かが支えてくれたせいか、そこまで痛みはなかった。
ふと見ると、大地君が両手で私の体を抱えるように、壁からガードしていた。
大地君は真っ赤な顔をして「ごめん」と言った後、「ユウゴてめぇ!!」と言いながら走り、ユウゴ君は全速力で逃げていた。
明日香はそれを見ると「ガキくさ… 大丈夫?」と聞いてきた。
「う、うん…」と言いながら、胸の奥が締め付けられるのを感じていた。
その日から、大地君の事がますます気になり始めていたんだけど、話しかける勇気も、挨拶をする勇気すらもなかった。
大地君からすれば『違うクラスで、同じ部活のマネージャーの片割れ』程度に思われていたんだと思う。
大地君の周囲には、常に男の子が7~8人いたし、人見知り全開だった私には、挨拶をするだけでもかなりの勇気が必要だった。
そんなある日の事、顧問から部費を徴収するように言われた。
『話しかけるきっかけができるかも…』と思ったけど、大地君のクラスは明日香が担当になったため、話しかけるきっかけさえない状態。
仕方なく、ユウゴ君に「部費、お願いできる?」と聞くと、ユウゴ君は「今日財布忘れたから、大地から貰ってくんない?C組の木村大地。知ってるよね?いつも一緒にいるやつ」と言ってきた。
「今日じゃなくてもいいよ?」って言ったんだけど、ユウゴ君は「明日も忘れる予定だから、大地から受け取って」と言うだけ。
話しかけるきっかけが出来たんだけど、明日香に「部費ってどうなった?」と聞かれた際、その事を明日香に話すと、明日香は「じゃあついでに回収しておくわ」と言い、ユウゴ君の集金袋を持って行ってしまった。
少し残念に思いながらも、話しかけることが出来ず、そのまま夏休みを迎えてしまった。
何も変わらないまま、2学期が始まると同時に、明日香はバイトを始めてしまい、ほとんど部活に顔を出さなくなってしまった。
練習に来れない分、試合には来てくれたし、部費の徴収はすべてお任せの状態に。
そんなある日の試験直前、部活停止期間を利用し、静香と試験勉強をする約束をしていたんだけど、顧問に呼ばれ、下校する直前に職員室へ。
顧問からは「木村の部費を多く取ってたから返しておいてくれ」と言われた。
『返しておいてくれ』と言われても、大地君は帰っちゃった後だし、部活停止期間だから、部室に行って渡すこともできない。
しかも封筒の中に現金が入っているから、持ち歩くのも抵抗がある。
困りながら玄関まで行くと、たまたま居合わせたケイスケ君が「なんか困りごと?」と聞いてきた。
部費の事をケイスケ君に言うと、ケイスケ君は「まだ公園にいるんじゃないかな?行ってみる?」と聞いてきた。
ケイスケ君に手渡しても良いんだけど、現金が入っているし、トラブルになったら困るから、ケイスケ君と公園へ行くことに。
ケイスケ君と公園へ行ったんだけど、大地君の姿はなく、男の子たちが数人いるだけ。
ケイスケ君が「大地は?」と聞くと、その中の一人が「ユウゴと鬼ごっこ」と言っていた。
「それじゃあ、いつ戻るかわかんねぇなぁ… どうする?待ってる?」とケイスケ君に聞かれたけど、静香と約束があるから待っている時間はない。
その事をケイスケ君に言うと「じゃあ、俺が渡しとくよ」と言ってきた。
封筒にサインをして、顧問に返すよう伝言をお願いし、残念に思いながらも急いで駅に向かっていた。
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