第68話 困惑

3人が飛び入り参加し、右も左もわからないまま作業を命じられた少し後。


監督が「そこのデカい兄ちゃん、ちょっと来てくれ」と誰かを呼んでいた。


3人のうちの誰かだとは思うんだけど、誰のことを呼んでいるのかわからず。


カオリさんが「誰?成金?」と聞くと、監督は「成金がいるのか?」と聞き返していた。


紹介をしていなかったことを思い出し、紹介しようとすると、大介君に「美香、このカットにシャドー付けてくれ」と言われ、紹介できないままでいた。


仕方ないといった感じで、二人は監督のもとに行ったんだけど、木村君はすぐに戻ってきた。


木村君は「デカい兄ちゃんってなぁ」と言いながら笑い、作業を続ける。


少ししてからユウゴ君が戻ってくると、「デカい兄ちゃんって…」と軽くへこんでいるようだった。


「なんか言われたんですか?」と聞くと「背中痒かったけどもういいって…」と言い、黙り込んでしまった。


内心『ざまぁ』と思いながら作業をしていると、けいこちゃんが「ゆうちゃんきて~」と勇樹君を呼んだんだけど、ユウゴ君がけいこちゃんの元へ。


「なに?」とけいこちゃんが言うと、ユウゴ君は「今呼んだろ?」と…


「は?呼んでないし、勇樹君呼んだんだし。つーかあんたなんて名前?」


「ユウゴ」とユウゴ君が言うと、けいこちゃんは勇樹君を捕まえ「あ、ユウちゃんここさぁ」と話を進めてしまい、ユウゴ君は置いてけぼりを食らっていた。


時間が経つにつれ、みんなは吸い込まれるように隣の部屋へ。


一人減り、二人減り、三人減り…


『私も寝よう』と思うと、3人はソファで項垂れていた。


「どうしたんですか?」と聞くと、木村君が「どこで寝ればいい?」と…


紹介もしていなければ、建物の案内もしていないし、どういう集まりなのかの説明もしていない。


「すいません。すっかり没頭してました」と言い、寝室に案内した。


寝室に入ると、3人は事件現場のような部屋の中を見て、「何が起きた?」と小声で呟く。


「寝てるんですよ」と言った後、空きスペースを足で探し、「この辺空いてますから適当にどうぞ」と言った後、自分のスペースを探しあて、布団に入った。


翌朝、目が覚めると3人は爆睡中。


目をこすりながらリビングを通り過ぎ、キッチンでコーヒーを入れていた。


カップにコーヒーを入れ、ダイニングに座って資料を見ながらコーヒーを飲んでいると、木村君が起きてきた。


「おはようございます。コーヒー飲みます?」と聞くと、木村君は眠そうに「ああ」と返事をし、隣に座った。


キッチンに行き、コーヒーを入れて運んでいるときに「毎週ここに?」と聞いてきた。


「そうです。前にOPの件で怒らせちゃったから言いにくくて…」


木村君は「あーそう言うことか」と言いながらカップを受け取り、コーヒーを一口飲んだ。


鳥のさえずりが聞こえる中、しばらくの沈黙の後、木村君が「なんかいいな。こういうの」と言ってきた。


「でしょ?最初は戸惑ったけど、すごく楽しいんですよ」


「だろうな。すげぇわかる。そりゃ喧嘩吹っ掛けてまでやりたがる訳だよな」


「あ、あの…、私の処分って懲戒ですか?」


「ん?遊びなのになんで処分しなきゃいけねぇの?おかしくね?」


木村君の言葉を聞き、思わず耳を疑ってしまった。


「昔の仲間と遊んでるだけだろ?仕事に差し支えてたり、問題行動してる訳じゃないし、処分の対象にはならないよ」


「良かったぁ…」


ほっとしながら小さくつぶやき、鳥のさえずりを聞いていた

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