第69話 適応

木村君から『処分無し』と聞いた少し後、みんなはぞろぞろと起き出してきた。


監督は起きてすぐにキッチンへ行き、朝食の準備を始め、私とけいこちゃんもそれを手伝う。


朝食の準備ができた後、みんなで食べながら打ち合わせをしていると、勇樹君が「大介が終わったら美香だよな?」と聞いてきた。


すると木村君が「終わったらって?」と聞いてきたので、順番で作成し、良いところをつなぎ合わせるということを説明。


すると、初回に参加していなかったヒデさんが「俺も美香の次にやりたい」と言い始め、まさかの予定延長が決まった。


監督が今まで完成したものを見せると、ヒデさんが「ここは残そう」とか「ここはいらない」とか、ズバズバと言ってくるんだけど、監督は「いや、ここはいるだろ」とか「このカットこそいらないだろ」とか、正反対の意見を言ってくる。


そこからみんなで意見を出し合い、「とりあえず、大介のOPを完成させよう」と言うことに。


その言葉を合図に、みんなでパソコンの前に座り、作業を始める。


作業を始めるのは良いんだけど、徐々にみんながヒートアップし、より完成度の高いものを求めた大介君と勇樹君の間で、口論が始まってしまった。


私たちには、普段と何ら変わりない光景だったから、普通に作業をしていたんだけど、ケイスケ君には刺激が強すぎたようで、間に入りオロオロしていた。


ユウゴ君に「あれ、止めないでいいの?」と聞かれたけど、「そろそろ終わるはずです」と言い、作業を再開。


少しすると、二人の意見がまとまったようで、椅子に座り、作業を再開していた。


最初の方は戸惑っていた3人だけど、徐々に雰囲気やルールにも慣れ、食事の合図が来るとすぐに並ぶように。


3時のおやつに、監督がミートパイを作ってくれたんだけど、ユウゴ君は「監督ホント天才」と言いながら食べ、監督は上機嫌になっていた。


夕方になるとアルコールが解禁され、カオリさんと監督は飲む飲む…


ユウゴ君とケイスケ君は、面白がってカオリさんと監督に近づき、酷く絡まれてしまい、激しく後悔していた。


それを見たけいこちゃんが「馬鹿だねぇ」と言っていたので「あれ、うちの副社長と常務なんだよ?」と教えてあげると、小声で「マジ?終わってんじゃん」と。


それを聞きつけたユウゴ君が、けいこちゃんに文句を言おうとしていたけど、カオリさんと監督が開放してくれず。


目で助けを求めていたけど、見えないふりをし続けた。


しばらく作業していると、ヒデさんが木村君を呼び出し、ベランダで密談開始。


『なんだかんだ言って馴染んでるんじゃん』と思いながら作業を続けていた。


順番にお風呂に入ると、監督が「3人は入らないのか?」と聞いてきた。


木村君が『着替えが無い』ことを伝えると、監督は別の部屋に行き、萌えアニメのキャラクターが書かれている、かわいらしいピンク色のTシャツを手渡した。


みんなで笑いながら「監督!なんでそんなの持ってるんですか!?」と聞くと、赤い顔をした監督は「もらったんだよ。かわいいだろ?」と。


みんなで大笑いをし、「やだぁ。それ3人が着たら幻滅するわぁ。しかもうちの会社の幹部3人よ?社長と副社長と常務よ?」と言うと、木村君は「お気持ちだけありがたくいただきます」と丁寧に返品し、パソコンの前に。


ユウゴ君は「俺なんかに監督のTシャツは、貴重過ぎて着れないっすよぉ。やっぱ監督が着なきゃ~」と言いはじめ、ケイスケ君も「そうそう!」と言いながらそれに乗っかり、3人とも着ることを拒否していた。


結局3人は、入浴中に洗濯し、乾燥機にかけることに。


夜も更けてくると、徐々に人数が減っていき、私もふらつきながら寝室に向かった。


翌日は作業をせず、掃除してからヒデさんに駅まで送ってもらうことに。


監督はユウゴ君とケイスケ君が気に入ったようで「また来週な!」と約束し、ユウゴ君とケイスケ君は「わかりました!!」と元気に答えていた。


駅までの道中、OPの話をしながら車に揺られていると、木村君が「ヒデさん、来週は俺が車出すから、迎えいらないですよ」と言い、ヒデさんは「仲間増えたな」と笑っていた。

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