第5話 声
「もしもし?」
携帯から聞こえた男性の声。
その声を聴いたとたん、なぜか言葉が詰まり、声を発することができなかった。
「あれ?もしもし?聞こえてる?」
一方的に話しかけてくる声は、どこかで聞いたことがあるけど、どこだか思い出せないし、なぜか声を発することができない。
それと同時に、軽い頭痛を感じ、携帯を持つ左手が震えていた。
「おーい。聞こえてる~?」
「・・・はい」
たった二文字の言葉を発するだけなのに、手の震えは止まらず、声がかすれる。
『なにこれ?しばらく誰とも話してなかったから?この前静香と話したときは、こんな風にならなかったよね?』
携帯を持っていられなくなり、スピーカーに切り替えたけど、手の震えは治まらず、必死に右手で左手の震えを抑え、軽い頭痛を感じていた。
「あれ?もしもし?園田美香ちゃんの携帯でいいんだよね?」
「…はぁ」
「あ、俺、高校の同級生だった木村、あー木村大地だけど、覚えてる?」
正直言って覚えてない。
名前を言われ「そんな人居たかなぁ」程度にしか記憶にない。
返事を出せずにいると、木村と名乗った人は
「あ~だよねぇ。話したことなかったしね…。同じ部活だったけどなぁ」
と、少し寂しそうな感じで、つぶやくように言っていた。
『高校の同級生』と言われ、どこかで聞いたことのある懐かしさの正体が分かった。
けど、それ以上のことは思い出せない。
そんなことより、ずっと感じていた軽い頭痛が、より酷くなっていた。
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