第18話 期末試験と結果発表。
「あー、どうなるかなー......」
インターンへの申し込みが終わり、1週間が経った頃、見山は大学の学食で勉強をしていた。お昼時を過ぎた学食はフリースペースになっており、見山のように勉強をする学生や、何か打ち合わせのようなことをしている学生たち、ただ友達と喋っている学生たち、と皆思い思いの時間を過ごしていた。
「どうなるかな、って期末試験のこと?」
見山の正面に座っていたミキは参考書から視線を上げた。同級生である2人は、大学の期末試験の勉強をするために学食に集まっていた。
「ううん、インターンの結果のこと」
「そっか、そろそろ結果が出るんだっけ」
「そうなんだよねー」
見山とミキは真面目な性分なので大学3年生の後期となると、そこまで取るべき単位はない。したがって、試験数も多くはない。それでもこうして2人が集まって勉強しているのは、今までの大学生活での習慣によるものだった。
「ハルちゃんが勉強に集中できてないのは、それが原因?」
「あれ、バレてたか」
見山ことハルはえへへと頭をかく。以前よりも茶髪の色が抜け、明るくなっている。今日のハルは黒のスキニーを履き、カーキのミリタリージャケット、白のインナーを着ていた。
「インターンの結果を待つのって、なかなか緊張するよね......私も落ちてる数の方が多いし」
ミキが頷いている。ミキはハルよりも以前から就活を始めており、インターンに申し込み始めるのも早かった。そのため、申し込んだインターンの数は、ハルを遥かに上回っていた。
「やっぱりなかなか難しいよね~、1つくらい受かってると良いんだけど」
ハルはため息をつきながら、机の上の自分のノートをパラパラとめくった。そろそろどこかのインターンの結果が来ても良い頃なのだ。
「ハルちゃんはどこにインターン申し込んだの?」
ミキが尋ねるとハルは指折り数えながら答えた。
「この前の説明会で見たA食品会社、B電機機器会社、C通信会社の3社だね」
ミキは目をぱちくりさせていた。
「すごいね、3社とも全然違う業種なんだね」
「言われてみればそうかも」
ハルは頷いた。
「なかなかまだ働きたい業界が分からないんだよね......ミキちゃんは決まってる?」
「私もまだ絞りきれてないかな」
ミキは苦笑いしながら答えた。
「なかなか決め手が見つからないよね」
「そうだよね。良いなと思う業界はあるんだけど......」
そう言うと、ミキは困り顔になった。ミキは、ハルよりも以前から就活に取り組んでいる。そのミキでさえ、働きたい業界が決まっていないのだから自分が決まっていないのも当然だ、とハルは思った。
「知ってる業界はそれだけ有名だし、人気度も高いもんね」
ハルは知ったような顔でそう言った。まだインターンに申し込んだだけだと言うのに。
「そうそう。倍率高いからインターンすらなかなか受からないよ......」
だんだんミキのテンションが下がっていく。
「インターンも受からないのに、就活できるかな......」
「心配になるよね......」
ブルーな気持ちになる2人。ハルが落ち込んだ気持ちを晴らそうとスマホを見ると、1件のメールが来ていたことに気づき、それを開いた。
「あ、インターンの結果が来たかも」
「ほんとに?」
「うん、B電機機器会社から」
ハルは動悸が激しくなるのを感じた。
「結果は......?」
ミキが固唾を飲んで見守る。
「B電機機器会社のインターンの結果は――」
※※※※※※※※※※※※
「山岡君、週次報告の資料どんな感じ?」
「もうできてますよ」
オフィスビルの一角、山岡は自分のデスクに向かい、仕事をしていた。
「助かるよー、いったんそこで内容確認させてもらってもいい?」
「分かりました」
上司の山下が指差した会議室を見て、山岡は立ち上がろうとした。
「あ、ごめん、トイレ行っても良いかな? 10分後にそこの会議室集合で!」
そう言うと山下は足早に山岡のデスクを去っていった。こんなやり取りはいつものことなので、山岡は気にせずパソコンに向かう。
上司の山下はどこか抜けているが、世間一般の言う仕事のできる上司だ。年齢は30代前半で、見た目も中身も若い。山岡が今の部署に配属された時に、山下は
『山下の部下が山岡、って何か面白いね。山々コンビ的な!』
と言って山岡を若干引かせた。だが、今ではそんなマイナス点を補ってあり余るほど山下は優秀であると、山岡は分かっていた。
そんな時、山岡はポケットにあるスマホの振動を感じた。山下が来るまで時間があるのでスマホを確認すると、そこには見山からの連絡が来ていた。
『やまさーん、インターン落ちちゃったよー(;_;)』
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見山:レベル10→11
見山はインターンの選考に落ちた!
レベルが上がった!
ミキ:レベル19
山岡:レベル60
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