第13話 インターンシップの初エントリー!
「さてと」
弟ナツキとの会話を終えたハルは、自室の椅子に座り、ひと息ついた。目の前にあるパソコンを開くと、入浴前までいじっていた画面が表示された。そこに写っていたのは、A食品会社のホームページだった。
(ここから入るんだよね)
そのホームページの新卒採用と書かれた部分をクリックすると、インターンの募集要項が書かれたページに移動した。インターンの日数や内容が書かれている。
A食品会社のインターンは1日通して開催されるもので、場所はA食品会社の工場で行われるようだ。工場と言っても都心からは思っていたよりも近い。インターンの内容は、午前中は工場見学、午後はグループディスカッション、と書かれている。
(工場見学は気になるかも。グループディスカッションってどんな内容なんだろ)
ハルはインターンの内容に想いを馳せつつも、『エントリーはこちら』と書いてあるアイコンを押した。ページが移ると、そこには募集期間、募集者条件等の詳細な情報がズラリと表示された。ハルは、入浴前にここまでたどり着いたところで力尽きてしまったのだった。
「よし、やろう!」
ハルは気合いをいれ、カチカチとマウスを操作し始めた。黙々と文章を読み進め、必要な情報を入力していく。名前、年齢、住所、等の基本情報は登録している就職サイトの情報がそのままコピペされているので、それら以外の部分を埋めていく。ちなみにハルはマ◯ナビを使っている。
順調に進めていくと、顔写真を提出するページになった。ハルは鞄から封筒を取り出し、その中のCDをPCに入れた。PCがCDを読み込んでいる間に、封筒から出てきた四角い紙を見る。
それは、ハルの証明写真だった。
(頑張って午前中に撮ってきたんだよね)
ハルは今日の午前中、インターンの申し込みに必要な証明写真の撮影に行っていたのだ。山岡に聞いた通り、撮影をしてくれて、写真とデータをもらえるところを探し、申し込んでみたのだ。
ハルが行ってみて思ったのは、想像よりきちんとした撮影所だった、ということだ。初めて訪れたその撮影所は、地下に位置しており、中に入ると多くの撮影機材がところ狭しと並んでいた。
ハルが圧倒されていると、カメラマンのおじさんが現れた。40代後半と言った見た目で、上下黒の洋服を着ていたあたりがカメラマンらしいとハルは思った。
その場で説明を受けた後、促されるままに椅子に座らされ、パシャパシャ写真を撮られたのだった。
(あれはビックリしたけど、楽しかったなあ。カメラマンのおじさん、良い人だったし)
ハルがさらに驚いたのは、その後だった。撮影所のPCの前に座らされたと思ったら、撮影したハルの写真をその場で修正し始めたのだ。カメラマンのおじさんは、ハルに質問をしながら、顔のシミや気になる部分をみるみるうちに消していく。顔の輪郭まで良い感じに細くなる。
出来上がった写真に映るハルは、控え目に言っても普段より数段綺麗なハルになっていた。
(可愛いは作れる......)
そう心に刻み込まずにはいられないハルだった。
完成した写真は大小様々な大きさの証明写真に印刷され、そのデータの入ったCDと共にハルに渡された。
(これで英世6枚なら安いよね!)
そんなことを思っているうちに、CD内の証明写真データをPCに移し終わった。エントリーサイトに写真データをアップロードする。
さらにエントリーを進めていくと、志望理由、ガクチカ、好きなお菓子について書く項目が出てきた。ハルは山岡と話して完成させた文章をコピペしていく。
まだ自分史については書けていないが、山岡の言葉を信じて、そのままの内容でガクチカを提出した。
(自分史、さっきナツキと話した内容も書いておこうかな)
意外と、金髪にした理由とか、自分の中で印象的だった出来事を自分史に書いていった方が書きやすいかも知れない。ハルがそんなことを考えていると、ついに最後の確認ページにたどり着いた。
ハルは深呼吸して、そのページの1番下にあるボタンを、押した。
『エントリーが完了しました』
画面にその文字が表示され、ハルは大きく伸びをした。
「やっと終わったー!」
ハルは歓声を上げながら、両手足をジタバタさせた。画面に表示された『エントリーが完了しました』の文字を眺めながら、何とも言えない達成感に浸る。
ハルはふと思い出したように、机のそばにあった紙を手に取った。
レベル01 就活しようと思う
レベル10 企業の採用にエントリーできる
レベル20 書類選考を突破できる
レベル30 1次面接を突破できる
レベル40 2次面接以降を突破できる
レベル50 内々定を勝ち取れる
レベル60 複数業界で内々定を勝ち取れる
そこには、山岡から教えてもらったレベル分けの内容が書かれていた。これによれば、インターンにエントリーできたハルは、『企業の採用にエントリーできる』、すなわちレベル10になったことを示す。
(やまさんと話したのが1月になってすぐで、今が1月の中旬だから......レベル10になるまで大体2週間かかったんだね)
ハルとしては、大学のことをやりつつ、就活のこともやっているので、良いペースで進められている気がする。
(でも、3月までにレベル50って考えると、あと1ヶ月半だから......)
このまま順調にいったとしても、3月にはレベル40。これでは目標だったレベル50には届いていない。
ハルはうーん、と悩んだが、途中で考えるのをやめ、スマホを取り出した。
(こういう時はやまさんに連絡しよう!)
ハルはスマホを手に取り、ベッドにダイブした。仰向けになりながら山岡に連絡をする。
気づいているのかいないのか、スマホを打つハルの顔からは、自然と笑みがこぼれていた。
※※※※※※※※※※※※
ハルこと見山が山岡に連絡する約2時間前。
山岡はとある駅の改札口前にいた。
スマホをいじりながら人が来るのを待っている。まだ集合時間まで数分余裕がある。
(今日は日曜だし、そんなに遅くならないうちに帰るかな)
そんなことを考えながらスマホをいじり続ける山岡。やることもないので、SNSをボーッと眺めている。
すると、ふと誰かが近寄ってきた気配がして、山岡はそちらに視線を向けた。
「山岡さん、お久しぶりです」
「おう、久しぶり」
山岡が挨拶したその先には、ピンク色の髪のギャルが立っていた。
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見山:レベル9→10
見山はインターンにエントリーした!
レベルが上がった!
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