第8話 百年戦える模擬刀

 それは、おじいさんが聞かせてくれた昔話で一番好きなお話でした。

 まだ魔王が君臨していて、大陸全土に凶暴な魔物が蔓延っていた時代。

 最果てを目指して旅を続ける命知らずな吟遊詩人がいたそうです。

 私達の村に立ち寄った彼は、弦の音にのせて小さな奇跡を謡ったそうな。

 白銀の氷原の先に眠る巨大な氷の彫刻。

 透き通った薄氷色の神殿は氷精達をも魅了し、永久の美を保っているのだとか。

 村人の中には、彼のお話を嘘っぱちだと笑った人も居たそうです。

 でも、世界の何処かにはひとつぐらい、そんな奇跡があるんじゃないかって、幼い頃の私は、おじいさんの昔話を頑なに信じたものです。

 いえ、大人になった今でも、心の底では信じ続けているのかもしれません。

 幼い頃に思い描いた幻想的な神殿を、私は今でも時折、夢に見るのですから。


湖上永久氷刻こじょうえいきゅうひょうこく━━Antikurpアンティクルプ



 視界一面を白銀に染める薄氷の大地。日光を遮って天蓋を埋める雲海。ガラス細工のように神秘的な樹氷。

 一夜を野宿で過ごした(意識を取り戻したら日が昇ってただけ)俺とルルは、昼なかには無事『アンティクルプ』付近まで辿り着いていた。


 西果てにあるとされる聖剣の眠る地。そこは永久凍土の極寒地帯だった。

 本来、円環大陸の気候は、節目を定める風習もない程に穏やかものなのだとか。

 ただ、その中にも幾つか例外は存在するみたいで、『アンティクルプ』もまた、時の流れを忘れてしまったかのような、或いは、氷精に魅入られてしまったかのような不変の凍土に覆われていた。

 唐突な景色の一変には度胆を抜かれた。ルルが『ラッセンブルグ』の住人から聞いた話によると、魔王が封印された100年前には、既にそういう風説が広まっていたらしい。

 かつての勇者が魔王を封印する為に掲げたとされる聖遺剣『ラムスプリンガ』を外敵から守る為には、『アンティクルプ』の特殊な気候は最適なのかもしれない。

 そんな過酷な環境である『アンティクルプ』に独り住み着いているのが、魔術師アジルヒム・コルトレツィス……後の勇者の仲間だ。


「もうそろそろだと思うんだけど……」 


 不安げに呟き、魔女帽に降り積もった雪を手でさっさっと払うルル。背中には、箒が革紐で括られている。

 『白』だけの景色の中に映えるルルの紅蓮のような髪色。帽子が外れ、露わとなった彼女の髪は、それまで押し潰されていたとは思えない程、ふんわりと羽毛の如く柔らかな印象だ。まるで不死鳥の如くである。

 魔法使い然といった衣装には魔術による保温機能を搭載してあるらしい。ふっくらとした頬はほんのりと赤い。


 一方の俺はと言うと、こちらも紡希が気を遣って、体温調節の魔術を衣服に練り込んでくれたから、電気毛布に身を包んでいるかのように暖かい。

 とはいえ、肌の露出した部分はどうしようもなく、かじかんだ指先が火傷のような痛みを伴っていた。

 紡希はぶわっと羽を膨らませており、もふもふ度増し増しである。つい触りたくなるが、セクハラでつつかれたくないので、衝動を理性でなんとか抑えつけていた。


 ルルが話すに『ラッセンブルグ』から強奪してきた古書は『アンティクルプ』の正門にて使うものらしい。だとしたら……


「なにかしら別の結界が張られてるって事はないのか?」


 先程の不安げなルルの呟きに対して、俺は結界の有無を尋ねた。

 この異常気象そのものが、結界による副作用なのではないか? そう問いを重ねると、ルルは言葉にならない唸りを返した。紡希は絶賛人見知りスキル発動中である。ぴぃとすら鳴かない。


「そのアジルヒム・コルトレツィスってのは、たぶん、この世界の中では優れた魔術師なんだろ。なら、そんな人がわざわざ定住するぐらいなんだし、色々と仕込んでありそうだけど」

「あたしもそう思ったんだ。でも、まだ結界っぽいぶれは感知できないし、どちらかというと……ここの風土は概念魔術っぽい。かな」

「概念魔術か」


 俺にとって概念魔術は、最も馴染み深い魔術かもしれない。

 初めに『概念魔術』という名称を定めたのは『協会』だ。いわく実体無き魔術。いわく孤高なる魔術。いわく抽象的魔術。いわく継承的魔術。いわく概念的魔術。

 魔術そのものが日陰に属する手前、明確な定義は難しいらしいが、紡希の説明を借りるなら、それはもはや『呪い』と言い換えても差し支えないような、存在自体が人や世の均衡を乱す魔術を意味するものなんだとか。


 俺からしてみれば、紡希もルルも立派な魔術師だ。だが、彼女達であっても到達できない領域の一つが『概念魔術』らしい。まぁ、二人の普段の装いを信じれば。の憶測になるが。


「あたしのお母さんが幾つか概念魔術を開発してたから。……似てるんだ。うん、やっぱり聖剣は当たりかも」


 まぁ、もし『アンティクルプ』の異常の正体が、概念魔術の類なら、こっちとしても好都合だが。


「そういえば、まだちゃんと聞いてなかったな。ルルはどうして『ラムスプリンガ』を狙ってるんだ?」

「それは……」


 先に詰まるルル。そんな彼女に救いの手を差し伸べるかのタイミングで、白い靄の奥に、薄っすらと輪郭線が滲み出た。


「おぉ」


 感嘆の吐息が冷えた空気にとけていく。いつしか足場が、大地を包む薄氷ではなく、半透明な分厚い氷層に変わっていた。


「これ、湖の上なのか?」

「みたいだね。すっごくきれいー」


 頬に手をあて、うっとりと瞳を潤ますルルを一瞥し、俺も正面に聳え立つものを見上げる。

 透き通ったアイスブルーの氷塊を削って形作ったと思われる巨大な彫刻。


 『アンティクルプ』は、それ自体が氷で築かれていた。


 極限まで研ぎ均された氷の表面は、滑らかな光沢を放っている。

 偶然なのか、作為的なのかは定かでないが、俺とルルは奇しくも正門前に辿り着いていた。

 二対の円柱から左右に伸びていく氷壁。円柱の頂点は湾曲したアーチで結ばれている。

 氷花の壇に挟まれた導線が奥へと伸びており、その先には、大人が三人は横になれそうな幅広い階段が続いていた。 

 幾星霜を経てなお、この状態を保持しているのだとすれば、なるほど、概念魔術の信憑性も高まる。


「ルル、結界を」

「うん」


 ルルは外套の裏に隠していた古書を引っ張り出して、なにやら唱え始める。

 俺はじっと息を潜めて、ルルを見守った。

 やがて、俺にも視認できるドーム状の薄い膜が浮上し、それはルルが詠唱を終えた瞬間、派手に砕け散った。


「あ、シン。みてみてー。ほら、氷の薔薇だよ」


 ルルは導線沿いに並ぶ花壇から、ばきっと花をもぎ取って俺の鼻先へ近づけてくる。あまりにも無邪気な笑みに咎める気も失せてしまう。可愛いは正義だ。

 紡希も興味を持ったのか、俺の肩から離れて、花壇の縁をとことこ歩いていた。

 透明な氷の階段を上がると、門脇の円柱よりも更に一回り大きな柱が規則的に並んでいた。そして、いかにも神殿らしい建物が目に入る。


「お待ちしておりました。勇者殿」

「……」


 俺とルルは同時に沈黙。しゃがれた声の正体は、神殿の入り口に立つちっちゃな老人によるものだ。

 豊かな顎髭をしごきながら、皺まみれの目元により深い刻みを立てて微笑んでいる。

 世にも珍しい小人ドワーフの魔術師だ。ラッセンブルグの小人族はみな一見して職人気質だったし、一般的なイメージとしても小人と魔術はあまり結び付かないのではないだろうか?


 黙り込んだまま立ち尽くす俺達の反応を受けて、小人の老人はもそもそと口元を動かした。


「おぉ、うっかり。わしがアジルヒム・コルトレツィスですじゃ。この地にて聖遺剣の守護を務めておりまする。して勇者殿……聖女様のお姿が見えませぬが?」


 どうやら、偉大なる魔術師アジルヒム・コルトレツィスさんは俺達を勇者一向と勘違いしているみたいだ。ふむ。


「ウルメ・メイヒェンはラッセンブルグに待たせてあるんだ。ここ辺りの寒さは彼女に辛いと思ってね」


 声真似のサービス付きである。『トロイメライ』の世界に来る数日前に見た深夜アニメの主人公をイメージしてます。

 どうだろうか? 勇者っぽい? ルルに目線で問い掛けると、彼女は帽子を深く被って、ぷるぷると震えていた。あ、こいつ、笑い堪えてやがる。


「おや、そうでしたか。 しかし、さすが勇者殿ですな。こうも早く到着なされるとは……聖女様と交信したのが、つい先日じゃったのに」


 え、連絡手段あんの?


「アジルヒメよ。聖遺剣の元へ案内してくれ」噛んだ。おっさんを姫って呼んじまった。

「ぷっ」堪え切れなかったルルが吹き出している。

「ほっほ。わしのことはアジーとでもお呼びください。して、そちらのお嬢さんは?」

「あたしは天才魔法美少女ことフィルル・フォン・ハーメルンです」


 とびっきりのドヤ顔である。こいつ馬鹿だ。しかもなんか前より誇張が酷くなってる。


「それはまた……」


 アジーが「ほぅ面白い」とでも言いたげに目を光らせている。無駄に煽るなよ。

 神殿は予想以上の幅広さと奥行きを内包していた。光源は見当たらないが、内部は不思議と淡い光を宿している。


「随分と広いですね」

「ほっほ。老いぼれが独りで暮らすには、反って不憫というものですじゃ」

「あ、お風呂とかないですか?」

「冷水で宜しければ、貯水しておりますが」

「やっぱりいいです」


 残念そうに嘆息するルル。

 年頃の少女には申し訳ないが、もう少し我慢して貰おう。今はなによりも『ラムスプリンガ』の入手を優先しないと。


「ところで、つかぬ事をお伺いしますが、そちらの小鳥は使い魔ですかな?」

「……まぁ。そのようなものです」 

「ふむ……」


 会話が途切れると同時に、アジーが足を止めた。


「さ、こちらですじゃ」


 案内された先では、聖遺剣『ラムスプリンガ』が、創作上ありがちな台座に刺さってる状態で……なんてことはなく。

 狭い通路口以外、四面を氷壁に囲む小部屋の中央に、唯一、氷で造られていない台座が安置されていた。そこに寝かされているのは、日の光が差し込んだ深海を連想させるような瑠璃色の鞘が印象的な刺突剣レイピアだ。


 紡希の尖った爪が、俺の首筋にくい込む。彼女にしては珍しい、加減された感触がこそばゆい。

 どうしたのかと視線を投げ掛ければ、つぶらな蒼い瞳と真っ直ぐに見つめ合う。が、何を伝えたいのか分からない。まだアイコンタクトの域には達していなかった。


「やっぱり概念魔術が込められてる」

「っていうか、これって」


 どう見ても……。俺はある疑問を確かめようと『ラムスプリンガ』の柄へ手を伸ばした。


「真っ!! 駄目っ!!」


 耳元で、紡希がインコの体に搾り出せるだけの大声を張り上げた。

 びくりと全身を弾ませて後退りする。触れかけていた。迂闊だった。


「真とは……? はて、勇者殿の渾名ですかな?」

「俺が触らない方がいいな。ルル、頼んでいいか?」


 アジーの疑いを無視して、俺はルルへ呼び掛けた。彼女は無言で頷いて、聖遺剣を手に取る。


「なぁ、それってさ……模擬刀、だよな?」


 偶然にもまったく同一の型を、紡希の部屋で見掛けた記憶がある。


「そうだよ。うん。やっぱ当たり……これ、あたしのお母さんが現実あっちから持ち込んだ発現器だよ。よかった……ちゃんと帰ってくるつもりだったんだ」


 概念魔術の発現器か。しかも、異世界に持ち込んだのだとすれば、ルルの母親とやらは、魔術師として相当の手練なのだろう。俺の基準はいつだって隣人の廃人魔女だが、贔屓目に見ても、優劣の軍配はルルの母親に上がりそうだ。

 現実側へ戻る為の媒体としてルルの母親が持ち込んだ模擬刀が、今や聖遺剣として語り継がれている。ってことは、つまり……でも、ありえるのか?


「この世界で、100年前に魔王を封印した勇者って、ルルのお母さんだったのか?」

「それがよくわからないんだ。あたしはゲームソフトの『トロイメライ』を媒体にしてこっちの世界に来たからばかりだから」


 俺達と同じだ。ルルは説明を続けていく。ただ、声色はさっきよりも沈んでいた。


「でも、お母さんは『トロイメライ』が発売する一ヶ月前にはこっちの世界に来てた筈なの。異世界間に時流の差が生まれるのは珍しいことじゃないんだけど……」


 つまり、現実での一ヶ月の間に、こっちでは100年が経過していたと。ざっくりと換算して1対1200だ。現実で一秒経過する毎に、こっちでは、んっと、二十分……経ってるのか? ややこしいな。それよりも、今考えるべきはゲームの発売前に、ルルの母親が既に『トロイメライ』の世界に来ていたという部分だ。

 可能性としては、開発段階のゲームデータを媒体にしたか、もしくは。


「そもそも、『トロイメライ』というゲームが、実在する異世界をモデルにして開発されたか……だな。紡希、お前、知ってたのか?」


 しばしの沈黙を挟んで、観念したように紡希は細々と語り始めた。


「知ってたよ。私は模倣世界と元型世界って呼び分けてたんだけど、元型世界を樹幹に例えるなら、『トロイメライ』ってゲームは、そのままソフトの数だけ枝分かれした模倣世界なの」

「悪い、理解が追いつかない」

「だから、私達はゲームソフトを媒体にして模倣世界に来たわけじゃなくて、模倣世界を媒体にして元型世界に来てるの」

「バッドエンドを変える為にか? でも、それじゃあ世界規模で修正されるだろ?」


 事象改変の禁忌について、紡希は具体的な二の句を継がなかった。


「……うん」

「なら、ルルの母親については知ってたのか?」

「……知ってた」


 どう追及すればいいのか、次の言葉が見つからなかった。俺の質問が続かないのだと判断した紡希が再び喋り出す。


「ルルちゃんは、模倣世界の結末を知らないと思うけど……私は試しにクリアしたから、魔王の正体を知ってる。彼女もまた現実側の人間だった」

「はっ?」

「その人が、ルルちゃんのお母さんだと思う」

「ちょっと待ってくれ。じゃあ、俺達が勇者の代わりに魔王を封印したって……そんなの、ルルが報われないし、どう考えたってバッドエンドじゃないか?」

「ううん。ハッピーエンドにしてみせるよ。二人とも、私を信じて」

「信じろって言われても、それだけじゃ、さすがに……」


 ルルの母親は100年前に聖遺剣(模擬刀)を持ち込んでこの世界に来た。けど、今は魔王として封印されてる。なんだそれ、無茶があるだろ。

 ちらりとルルの様子を窺う。彼女は凍りついたみたいに呆けていた。

 成り行きを静聴していたアジーがとうとう口を挟む。


「老いぼれを置いてきぼりにしないで欲しいのじゃが、ふむ、つまり、そなたらは勇者殿ではないのじゃな?」

「世界を救う意気込みだけは、勇者にも負けないつもりです」春休み前にやらされた面接練習を思い出して、はきはきと喋ってみせる。そして、とびっきりの笑顔。

「ラムスプリンガをわしに渡すのじゃ!!」残念、俺のアピールは伝わりませんでした。

「ルルっ!!とにかく逃げよう!!」


 この世界に来てからというもの逃げてばかりである。経験値が手に入らないので、レベルも一向に上がりません。


「このアジルヒム・コルトレツィスを騙した罪。その身で償っていただきますぞ」

「紡希、とりあえずはお前を信じるよ。ってかさ、どっちにしろ信じるしかないしな」

「真、ありがと」

「ほらー、早く逃げるよー」


 まるで相手にされていないアジーが憤慨の雄叫びを上げていた。広々とした氷廊を走り抜けつつ、首を曲げてアジーの様子を確かめる。彼は周囲に幾つもの魔法陣を展開していた。七色に光り輝く蛍火が魔法陣から飛び出し、湾曲した軌道を描きながら迫ってくる。


「シンー、だっしゅー、だっしゅだよー!!」聖遺剣を小脇に抱え、箒に跨って、俺を引き離していくルル。ちょ、置いてかないで!!

「紡希っ!!」情けない声で、肩のインコに助けを求める。

「しょうがないなー」


 紡希は片羽をふわっと翻して


「第666機関解放、次元関数「そういうネタ挟まなくていいから!!」


 ぶぅ。と不貞腐れた鳴き声を上げ、紡希は改めて魔術を唱えていく。

 空中を凍結させて生成した薄氷の防壁が、不規則ランダムな軌道で迫る光弾を次々と受け止める。

 安心した俺は視線を前に戻して、逃走に集中する。途中、右足がずるりと滑って、派手に転びそうになった。

 つるつるの床を走る俺と、箒で疾走するルルとでは、あまりにハンデが大きい。ルルは既に『アンティクルプ』から脱出する所だ。


「紡希……あの魔術を……頼む」ぶっちゃけ、これだけはもう二度と使いたくなかった。


━━いやっふぅぅぅぅ!!


 熾烈なレース劇を終え『アンティクルプ』の影も見当たらない氷原まで逃げ延びた俺達は、二人して咳き込むような呼吸を繰り返していた。


「はぁはぁ、もう、大丈夫だよ、な」

「か、かな……うっ」


 ルルは口元を手で押さえている。顔面蒼白だ。途中で箒の魔力が尽きた彼女もまた、俺の道連れとなって黄金のキノコによる多重加速を味わっていた。


「さて、無事『ラムスプリンガ』も手に入れたし、あとは『トロイメライ』を目指すだけだな」

「う、うん」

「で、どうやって『トロイメライ』に行くんだ?」

「さぁ?」


 首を傾げて見つめ合う俺達に痺れを切らしたのか、紡希が不機嫌そうな声を上げた。


「円環大陸の南に『バンヘーゼン』って街があるから、そこを目指して」


 彼女の指示を受けて、ルルは不調を忘れたかのようにきらきらと紅い瞳を輝かせた。


「ツミキさんって女の方だったんですねー」

「……うん」

「この旅が終わったら、あっちで会ってみたいです」

「えぇ、ぜひそうしましょう!! みんなでオフ会だオフ会。やった、ルルに会え、ん、紡希さん? どうしま、ちょ、やめてっ!!」


 飛び立った紡希が、エジプトで館を守る番鳥さながらに次々と氷柱つららを射出してくる。

 必死に逃げ惑う俺を余所に、すっかり元気を取り戻したルルは聖遺剣を両手に抱きしめて、無邪気に笑っていた。

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