第545話 紐解け真の歴史
だが、考え方を変えればこれはチャンスでもある。
知性があるということは話が通じるということだ。
「聞きたいことがある」
剣を構え間合いを測りつつ、サーデュークに語りかける。
「どうしてお姫様を狙う? 何が目的だ?」
「ウーム。そんなことを聞いて何になるというのだ」
「それは答えを聞いてからわかることだから今はまだわからないさ」
「確かに」
サーデュークは鼻を鳴らす。
「フム。逆に聞くが、どうしてだと思う?」
「逆に聞くなよ」
面倒くさいな。
「ハ。呆れた男だ。逆に聞いたのは貴様に考える余地を与えるため。最初から質問に逃げずに、少しは自分の頭で考えたらどうだ?」
「余計なお世話だわ」
んだよコイツうぜぇな。かなりのクソ上司感が出てるじゃねぇか。
「クク。短気な男だ。器が知れるな」
「いいから質問に答えろよ」
「よかろう」
サーデュークはハルバードの石突で大地を打つ。そのから瘴気の渦が生じ、一帯に広がっていく。
「我が王女を狙う理由。それは」
凄まじい殺気が、俺の心身を打った。
「復讐だ」
全身の毛穴が開く。この圧力は並大抵じゃない。今まで対峙したどんな敵とも違う、極めて異質な存在感。
俺の剣と、サーデュークのハルバードが激突する。俺達を中心に広がった激突の余波が、大地を円状にめくり上げていく。
たった一合のやりとりで、平原には巨大なクレーターが生まれてしまう。セレンが巻き込まれなくてよかった。さっさと離脱させておいたのが功を奏したな。
そこから、凄まじい攻防が始まった。
俺も全力を出すしかないほどの激しさだ。
「復讐だって? 一体どういうことだ」
「フン。説明する気はない。貴様は無関係だ」
「魔王ってのは、この国のお姫様に恨みがあるってのかよ」
「ム」
言語に絶する激闘の最中、俺達は語気強く言葉を交わす。
「貴様は二つ勘違いをしている。まず恨みを抱いているのは魔王様ではなく、我個人だ。そしてその対象は王女ではなく、王室だ」
「神の山に引きこもってたくせにノコノコ出てきたのは、お前の独断だってことか。なんだよ。案外センチメンタルなんだな。魔族ってやつは」
「それほどでもない。ヌンッ!」
ちょうど百度目の剣戟で、俺は強かに打ち飛ばされた。
大地を転がり、剣が手から離れる。
くそ。このサーデュークとやら、冗談抜きで半端なく強い。
今の俺は瘴気も使えないし、万全の状態とは言い難い。流石に一人で戦うのは無謀だったかもしれねぇ。
俺はよろよろと立ち上がる。一帯は荒れ果て、すでに不毛の地と化していた。
「ったく。オメーはグランオーリスの王室に、どんな恨みがあるってんだ? ああ?」
「フ。知りたいか」
「うん」
「ならば教えてやる」
サーデュークの声は、怒りに打ち震えている。
「今から十余年前。建国戦争の折。今の国王であるヘリオス・オーリスは、我に援軍を送ることを渋り、見殺しにしたのだ。そのせいで我が軍は敵に包囲され、壊滅した」
「なんだと? それって」
どういうことだ。
つまりこいつはモンスターじゃなくて、元人間だってのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます