第386話 意志の力っていう
サニーは続ける。
「スキルをもってスキルを超えることはできない。生来のものだからな。だから俺は考えたのさ。本質的にスキルを超える力はないものかと」
「ふむ。なるほど」
「その力を得るために、丸一年かけて色々な国を巡った。帝国で魔導具についても学んだし、王国の魔法学園で色々教えてもらったこともある」
「お、そうなのか」
魔法学園の生徒ってわけじゃないだろうな。外部聴講生ってやつか。
「だが、どの国でも俺の求めるものは手に入らなかった。魔法も、魔法から作られた魔導技術も、全てはスキルの代替品だ」
「うーん。神スキルの代わりになるものがあればワンチャンあるんじゃないのか?」
「あればな。魔法で神スキルほどのものを再現するには、そもそも使用者が神スキルをもっていないと意味がないんだ。神スキルに匹敵する魔法は、使用者に膨大な魔力を要求する。俺にはそこまでの魔力はなかった」
ああなるほど。
エレノアとかがそういう例だもんな。
『無限の魔力』があるからこそ、強力な魔法を無制限に撃てるっていう。
そう考えたらやっぱりあいつはチートだな。
「落胆しながらグランオーリスに戻ろうとしていた、そんな時だ。俺はある古い文献を見つけた」
「古い文献?」
「そこには人間の持つ意志の力について書かれていた。定められた運命を変革する力だという僅かな記述に最後の望みを賭けて、俺は自らを鍛え抜いた。後進の育成にも励んだ。大変な苦労をしたよ。言葉では語りつくせないくらいの」
苦笑するサニー。
俺には想像もできないな。
「そしていつしか、俺はこの力を手にしていた。まさか、ここまでの力だとは思わなかったけどな」
ふーむ。
「その古い文献って、どこにあったんだ?」
「教えてもいいが、内緒にしてくれるか?」
「ん? 言うなって言うなら言わないけど」
サニーは頷き、人差し指を水平に突き出した。
それは、はるか遠方にある神の山を指していた。
「登ったのかよ」
「ああ。ほとんど自暴自棄になっていたせいだ。普通じゃ考えられない。罰当たりな行為だと思っていたからな」
「今は思っていないのか?」
「神の山というのは偽りだ。あの場所には、かつて人が住んでいたはずだ。文化の痕跡があった」
文献が見つかるくらいだからそうなんだろうな。
あれか? 神族というか、いわゆる古代人が住んでいたのかもしれない。
「わざわざ言いふらすつもりもないがな」
サニーは一息を吐く。
「さぁ、俺のことは話した。次はお前の話を聞かせてくれ。人間の持つ意志の力というのは、一体何なんだ。スキルをも凌ぐこの力の正体は、一体何なんだ」
それは、そこそこ核心をついた質問だった。
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