第162話 一瞬ビビった
「……参ったな」
頭がついていかない。
ただ、プロジェクト・アルバレスが機関でも重要な計画だったことを考えると、俺に対するこの扱いもわかるかもしれない。
「待て……まさかお前」
フェザールが立ち上がる。
すると、喋っていたローブの女も立ち上がり、頭を覆っていたフードを外した。
白金のような艶やかなポニーテール。瞳は燃えるような紅。陶磁器の白い肌は、どこか妖精のような雰囲気を醸し出していた。
すぐさま『イヤーズオールドアナライズ』を使う。
だが、何故か発動しない。なんでだろ。
フェザールが震える声を紡ぐ。
「シーラ……!」
うそやん。
「パパ。ロートス様を連れてきてくれてありがとう。おかげでやっと、自分の使命を果たすことができるわ」
「ああ、そうか。アルバレスの守護隊。お前は……そうだった。そういうことか」
え、どういうこと。
なにがなんだかわからない。皆目見当もつかん。
「シーラ……『ツクヨミ』の中で何があったかは知らんが、父の知らぬところで立派に成長していたようだ。さすがは俺の娘だな」
フェザールとシーラはにこりと微笑む。親子の再会である。
たぶん感動の再会なんだろう。
俺には一切の事情が不明だから、よくわかんね。
まぁいい。俺には俺の事情がある。
俺はシーラを観察する。この子がフェザールの娘さんで、サラの担当だった研究員か。
大体十七、八歳くらいだろうか。すらっとした長身で、美少女というよりは美人と形容した方が適切なくらいの色気だ。おっぱいは、良くも悪くも平均くらいだけど。
俺は口を開く。
「シーラ」
「はっ」
「頼みがある」
「なんなりと」
シーラは再び跪き、頭を垂れた。
「サラとウィッキーっていうマルデヒット族の姉妹を覚えてるか。ここに実験台にされてたらしい」
「はい。憶えております。サラはあたしが担当しておりました。ウィッキーは別の者が担当しておりましたが、スキル『ツクヨミ』を手に入れ、我ら守護隊の精神を次元の狭間に閉じ込めてしまった。不覚を取りました」
「ここにいるのがウィッキーだ。こいつを恨んでいるか?」
俺はウィッキーのフードを外す。ウィッキーは驚いていた。
「……正直に申し上げれば。彼女のせいで我らは使命を果たせずにおりましたから」
「今すぐ許せ」
俺の言葉に、シーラは顔を上げる。
ウィッキーも驚いたように俺を見ていた。
この場合、俺の頼みは機関のトップに会わせろというのが妥当だろう。だがそれよりもサラとウィッキーの仲直りが先決だ。俺にとっちゃそっちの方もちゃんと大事なのだ。
「ロートス……」
ウィッキーが感極まったような声を漏らしている。
「ご命令とあらば、恨みを忘れます」
「それでいい。それからシーラ。サラはお前のことを慕っていたようだ。お前に『ツクヨミ』を食らわせた実の姉に二度と会いたくないと言うくらいにはな。だから、姉妹の仲を取り持ってほしい。仲直りさせる手助けをするんだ」
「仰せのままに」
「よし」
これでいい。一つ懸念が減ったな。
やったぜ。
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