第131話 運命の再会

「あなた。どうしてこんなところに」


「そりゃこっちのセリフだぜ。お前こそ、学園はどうしたよ」


 まさかエレノアがエルフに捕まっているなんて、誰が想像できただろう。


「私は……その、エルフに魔法を教えてもらおうと思って」


「はぁ?」


 そういえば図書館で見かけた時、師を探すとかなんとか言っていたな。それでエルフに教えを乞いに来たってのか? 軽率にもほどがある。


「いくらエルフが魔法に詳しいからって、無茶があるだろ。正面から頼んで、はいそうですかって教えてくれるわけない」


「分かってるわよそんなこと。それでも諦めきれなかったの。普通の方法じゃ、間に合わなさそうだったし」


「いやいや……」


 さすがの俺も呆れるぜ。


 けど、ここで言い争いをしても仕方ない。


「マホさんは一緒じゃないのか」


 俺はきょろきょろしてみる。


「私が捕まった後、助けを呼びに行ってくれたわ。もしかしたら捕まるかもしれないって、別の場所で様子を見ていてくれたから」


「ああ。そういうことか」


 それならまだ望みはあるか。待っていればいずれ助けはくるだろう。


 だけど。


「俺は、エリクサーを取りに来たんだ」


「エリクサーって、エルフに伝わる秘薬の?」


「ああ」


「どうしてそんなもの」


「ある人の治療に必要でな」


 途端に、エレノアの眉がきゅっと吊り上がった。


「もしかして、村の人達にむりやり取って来いって言われたの? あなたが『無職』だからって、そんな使いっぱしりみたいに」


「いや、そういうんじゃない。これは俺の意思だ。村は関係ない」


「だったらどうして? 治療にエリクサーが必要だなんて、普通の病気じゃないってことでしょう?」


「まぁ、色々あってな」


 俺はエレノアの隣に座り込む。

 それだけで、なんか落ち着く感じがした。


 二、三ヵ月ほど前までは、こうして二人で並んでいるのが当たり前だったのだが。それも遥か昔の事のように感じる。

 なんだかんだ言って、やはりエレノアはすさまじい美少女なのだ。幼馴染ということもあって、魅力を感じないわけにはいかなかった。


「エレノア。お前、いつから捕まってるんだ?」


「今朝よ。ほんと、災難だわ」


「ああ、まさしく」


 となると、エレノアは数時間もここにいるってことか。


「魔法でなんとかできないのか? 伝説の『大魔導士』だろ?」


「無理ね。この縄、魔力の動きを阻害する材質でできてる。魔法は使えないわ」


「さすがはエルフ。魔法に関してはぬかりないな」


「ロートス。あなたこそどうなの? この状況を打開するのに何か考えはないの?」


「何人か仲間がいる。はぐれちまったけどな。俺が捕まっていることに気付いて、助けに来てくれるといいんだが」


「望み薄ね」


 違いない。というか、俺が捕まっている間に、聖域のエリクサーを回収してくれた方がいいかもしれない。


 ふと、エレノアの小さな頭が俺の肩にのせられた。華奢な身体を、こちらに押し付けてくるように。

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