第121話 パーティメンバー選定の巻

 ウィッキーはかたちの良い顎を撫でながら、


「セレンのスキルは? 差し支えなければ教えてほしいっす」


「私のスキルは『ロックオン』。射撃や投擲に、自動照準補正と追尾能力を付与する」


「は? つよ」


 思わず驚愕の声を出してしまった。

 エイムアシストにホーミングだろ? チートじぇねぇか。


 しかし、ふるふると首を振るセレン。


「『ロックオン』は時間がかかる。必中でもない」


 にしても強力なスキルであることに変わりはない。


「なるほど。それなら選択肢は限られてくるっすね。セレンは攻撃魔法を伸ばすのがベスト。それも威力特化の魔法がおすすめっす」


「火力支援」


 セレンの言葉に、ウィッキーが首肯する。


「この際、前衛での戦闘力は捨てるっす。『ロックオン』があるなら、どでかい一撃を確実に当てる役割を担うべきっすね」


「わかった」


 ふむ。確かに、能力は特化した方がいい。一人で戦うわけではないんだし、それぞれが明確な役割を持ち、それを全うするのが合理的だし、なにより分かりやすい。


「なら、俺は?」


「問題はそれっすよね。先輩から聞いたっすけど……ロートスのスキルって、クソなんすよね?」


「そーだな。でも数だけは多いぜ」


 これまでの経験を鑑みるに、クソスキルだって使いどころがないわけじゃない。腐っても神から与えられた能力なわけだしな。だが、あまりにも限定的すぎる。『偽装ED』とかどこで使うんだよマジで。


「魔法を使うにあたって役に立ちそうなスキルってないんすか?」


「ない」


「即答っすか……」


「あったら最初から使ってるんだよなぁ……」


「それもそっすね」


 正直なことを言うと、俺も自分のクソスキルを全て把握しているわけじゃない。自分の中にあるものだから知ろうと思えば知れるが、数が膨大なために把握には多くの時間がかかるのだ。


 ウィッキーの口から洩れたのは、溜息だった。

 彼女の声は個人的に神に愛されたのではないかと思うほどの美声だ。溜息に混じったかすかな声は、俺の中にある男心の琴線に触れる。


「悩ましいところっす。ロートスには何が合ってるのか、ウチには分かんないっす」


「だよな。俺にも分かってない」


 そして、たぶん誰にも分からない。


「エルフの森に向かうメンバーを考慮するのがいい」


 セレンがそんなことを言い出した。


「ああ、たしかに。それだと俺の役割が浮き彫りになりそうだな」


 いまのところ確定メンバーは。


 俺。

 セレン。

 アデライト先生。

 フィードリット。


「この四人か……」


「あ、ロートス。もちろんウチも行くっすよー」


「まじか。そいつは心強いな」


 ウィッキーが加わるとなると百人力だ。


「戦力的なことを考えれば、アイリスも連れて行った方がいいか……」


 最強の布陣だな。


 こうなると、エリクサーを手に入れるなんて楽勝な気がして来たぜ。

 あまり人が多すぎても身動きが取れなくなるかもしれないから、六人くらいがちょうどいいだろう。


「ロートスは支援に徹した方がいいかもっすね」


「ああ。俺もそう思う。医療魔法をメインで覚えてみるか」


 方針は決まった。

 あとは俺の努力次第だ。

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