第120話 設定語り

「それで二人とも、魔法についてどこまで学んでるっすか?」


 部屋にあがると、さっそくウィッキー先生の講義が始まった。


「俺は、正直ほとんど何もわかってないな。授業で数時間と、魔導書を何冊か読んだだけだし」


 体内に宿る魔力を利用して、任意の効果を発揮する。

 いくつか魔法を覚えてはみたが、学問的にはそれくらいしか理解していない。


「しゃーないっすね~ロートスは。セレンの方はどっすか?」


「魔法学検定二級を持ってる」


「へぇ! すごいじゃないっすか! その歳で二級って」


「それほどでもない」


 魔法学検定ってなんだろう。英検みたいなもんかな。

 何も分かっていないと俺の顔に書いてあったのか、ウィッキーが補足をしてくれる。


「魔法学検定二級は、魔法学園の三年生が卒業前に取るようなレベルっすね。実際これをもっていれば就職にも有利に働くし、世間から尊敬の眼差しを向けられるくらいっす」


「すげぇ」


 セレンってそんなすごい子だったのか。


 言われてみれば、強そうな魔法を使っていたし、幼生とはいえドラゴンにとどめを刺せるくらいだもんな。


 うーん。だったらなんでエリートクラスなんだろうか。スペリオルとはいかずとも、マスタークラスに入っていてもおかしくないんじゃないか。

 クラス分け試験では巨像の不意打ちで気絶させられていたし、そういった部分が評価されたのかもしれない。


「問題は、ロートスがどこまで学んでいるかっすね」


「恥ずかしい話だが、ゼロの状態だと思ってくれ」


 入学前に何も学んでいなかった俺からしたら授業の方もちんぷんかんぷんなのだ。

 転生前の世界で例えるなら、普通の小学生が東大医学部に入れられたような感じ。


「じゃあまずは魔法の種類からっすね。魔法は大きく二つに分類されるっす。これくらいはわかるっすよね?」


「まぁそれくらいは。汎用魔法と専門魔法だろ」


「ご名答っす」


 ウィッキーはうんうんと頷く。


 この世界に生きるなら、これくらいは誰でも知っている。

 できるだけ簡潔に説明しよう。


 汎用魔法は、簡単だけど効果の弱い魔法。

 専門魔法は、難しいけど効果の強い魔法。


 みたいな。

 というより、俺の認識がこんな感じだ。本当はもっとちゃんとした定義があるのだろうけど、それは把握していない。


「じゃあ専門魔法の種類をあげてみてほしいっす」


「んー、そうだな。戦闘魔法に、錬成魔法。それと医療魔法だろ? それから……天候魔法と。あと一つはなんだったっけ?」


「時空魔法」


 セレンが付け足してくれる。


「おっけーっす。それだけ分かっていれば十分っすよ。時間に余裕があるわけじゃないし、いらないところは省いていくっすね。エルフの森に行くなら必要なのは専門魔法、その中でも戦闘魔法と医療魔法が重要になるっすね。二人とも、どっちが得意っすか?」


「私は戦闘魔法。冷気系の射撃と砲撃。近接戦闘にも心得がある」


「いいっすね。対応力が高いのはいいことっす」


「俺はどっちが得意とかはまだ分からないけど、一応簡単なのはどっちも覚えたぞ」


「なに覚えたんすか?」


「とりあえずフレイムボルトと、デピュレイトだな」


 前者はエレノアが使っていてかっこよかったから。後者は便利かつ簡単だったから覚えたのだった。


「初歩的っすけどアリっすよ。特にデピュレイトは森で役に立つはずっす」


 デピュレイトはいわゆる解毒とか消毒とか、そういった効果をもたらす。食中毒とかにも効果があるから、なかなか良い感じだろう。

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