第51話 もうだめぽ
「いただきまーす」
どうしてこうなるのか。
「ご主人様。いただきます」
「わたくしもいただきます、ですわ」
『てぇてぇ亭』に来た俺は、アデライト先生だけでなくサラとアイリスにもパフェを奢るはめになってしまった。予想はしていたけどな。そろそろ財布がすっからかんになるぞオイ。
「おいしい」
アデライト先生は頬を押さえて幸せそうに顔を綻ばせている。教師が生徒の前でする顔じゃないぞ。
「確かにおいしいですよこれ。ご主人様も、ほら、あーん」
「あーん」
サラにあーんしてもらう。うん。うまい。
それはともかく。
「先生。これで教えてくれるんですよね」
「ええ。教えて差し上げますとも。ちょっと待ってくださいな」
パフェを味わうつもりだろう。先生は黙々とパフェを食べ進めていく。
「マスター。あーん」
「あーん」
アイリスもあーんをしてくれる。役得ではあるけども、今はそれどころじゃないんだなぁ。
しかし、サラとアイリスが競うように俺にあーんをしてくるので、俺もたくさん食べなければいけなかった。ジャンボだからな。生クリームとアイスで腹壊しそう。
先生が半分ほど食べ終えたところで、上品に口元を拭った。
「さて、そろそろお話を始めましょうか」
「ああ。そうしてください。試験の評価方法と、あとクラス分けの結果も」
「さて」
アデライト先生は眼鏡をくいと上げる。
「まず試験についてですが……これは私の独断と偏見で評価をしています」
いきなりの爆弾発言である。
「わたしのスキル『千里眼』は、離れた場所の状況を観察できるのです。それも異なる場所を複数同時に。ですから、このスキルで新入生の試験中の行動はすべて把握しています」
「神スキルですね」
「便利ではありますが、神スキルというほどでは……。慣れないと気分が悪くなりますしね」
あれ。でもアイリスは、アデライト先生のスキルは肉体を変化させるものだと言ってたような。
「もしかして先生。複数持ちですか?」
「あら、よくわかりましたね」
先生は驚いて目を丸くする。
「私は『千里眼』の他にスキルを二つ持っているんですよ。すごいでしょう?」
「すごい」
合計三つも持っているのか。数だけなら負けちゃいないが。質では確実に負けてるだろうな。
「ところで先生。試験中の行動を全部把握してるってことは……」
「はい」
先生は笑顔で頷く。
「ロートスさん。あなたが全ダンジョンを制覇したことももちろん知っていますし、せっかく手に入れたメダルを捨てたところもちゃんと見ていました」
おーまいがー。
俺の工夫と努力はやっぱり何の意味もなかったってことかよ。
「ロートスさんが提出したメダルは一つでしたけど、実質三つですね」
「ウソだろ……?」
「ピンチになった他の新入生を助けたりもしていましたね。加点ポイントです」
「いや、あれはそういうんじゃなくて……」
「ダーメンズ家の長男を上手く煽てて、パーティの協調を保つことに尽力していたのも把握していますよ。個人技に頼らず、団体でのリーダーシップも花丸です」
「いやいやいや……」
今、俺の顔色は悪くなっているだろう。
目立たなくしようとしたつもりでも、先生にはばっちり見られていたとは。
ちくしょうめ。そんなのアリかよ。
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