第50話 大きいから許す
とはいえ、そうすぐに決闘が始まるわけでもない。
イキールとヒーモの決闘は明日の午後、クラス発表の後に行われることになった。
どうでもいいわ。
俺はエントランスで口論を続ける貴族二人を置いて職員室へと向かった。
今度は自分でちゃんとマップを見て向かったから、迷うことなく辿り着いたぞ。
「失礼します」
俺は大きな木製の扉を叩き、押し開いた。
中は大体、俺が転生前に通っていた高校の体育館くらいの広さがある。天井もそれくらいだ。こんな広い必要ないだろうに。
「広いですねぇ」
アイリスが感心したように言う。
「こんな広かったら、落ち着いてお仕事できなさそう」
俺の感想をサラが代弁した。
さて、俺のお目当ては試験官のアデライト先生だ。どこにいるのかなっと。
「あ、ご主人様。ここに座席表がありますよ」
「おお。でかしたサラ」
壁に貼ってある紙を見つめ、先生の席を探す。
「中央か……」
そのあたりを見据えてみると、確かに見つけた。緑のローブと、魅力的な深い谷間。本物かどうかは定かではないが。
「先生。少しいいですか」
机に向かって何やら唸っているアデライト先生に声をかけると、彼女は持っていたペンを置いて顔を上げた。
「おや、あなたはたしか……」
「ロートス・アルバレスです。新入生の」
「はい。ちゃんと覚えていますよ。何か御用ですか?」
「クラス分け試験のことなんですけど。ちょっと聞きたいことが」
「なんでしょう?」
「試験の評価方法は、結局どんなものだったんですか? メダルをとってこなくてもいいなら、メダルの有無だけが評価じゃないと思うんですけど」
「ほほう?」
先生は眼鏡をくいっとあげて、俺の顔をじっと見た。
「なかなか鋭い考察です。先生、勘のいい子は好きですよ」
「そりゃどうも。それで、教えてもらえるんですか?」
「まぁ……もう試験は終わりましたし、教えても差し支えないですからね~。ただし、条件があります」
「条件?」
「『てぇてぇ亭』のスペシャルジャンボパフェ」
「はい?」
「『てぇてぇ亭』のスペシャルジャンボパフェ」
「……まじか」
この先生。生徒に賄賂を要求してきおったぞ。信じられねぇ。
「よいですかロートスさん。新入生で試験の評価方法を聞いてきたのは今のところあなただけです。他の新入生には教えないことを聞けるのですから、それなりに出すものを出してもらわなければ道理にかないません」
「屁理屈すぎるでしょそれは」
「御託はいいのです。奢るのですか? 奢らないのですか?」
なんという。しかしそもそも俺に選択の余地はない。
「……ご馳走させて頂きます」
「やったー」
アデライト先生は少女のように破顔して、諸手を上げる。その勢いで巨乳が揺れ、俺の視線は釘付けになった。
「じゃあ、行きましょうか。いざ『てぇてぇ亭』へ!」
俺は財布の中身を確認しつつ、アデライト先生のウキウキな背中を追うのだった。
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