第25話 フレイムボルト・レインストーム
再びスライムの攻撃が迫る。
突き出された無数の触手。三人は散開し、それぞれ回避行動をとるしかなかった。
やばそうだぞ。助けに入った方がいいのか。
だが、クソスキルしか持たない俺になにができるっていうんだ。
それに助けに入ったらエレノアに見つかるし、何より目立っちまう。
「コピーってどういうことよマホさん!」
エレノアの顔は引きつっていた。
そりゃそうだ。今スライムと戦っている三人は、誰もが強力なスキルの持ち主だ。
つまり、敵も同じように強くなる可能性があるということ。
「どういうこともなにもそのまんまだよ!」
マホさんはグレートメイスを振り回し、スライムの触手をいくつも破壊していく。
「おい坊ちゃん! そのスキルはどんな効果だ! スライムにパクられそうなスキルか?」
尋ねられたイキールも、力強く巧みな剣捌きで触手を切り捨てていく。
「僕の『剣聖降ろし』は、その名の通り過去の剣聖の剣術をこの身に宿らせる。不定形のスライムにとっては、何の意味も持たないだろう」
イキールの言う通り、スライムは剣なんて使っていない。
「アタシの『シースルー・コンディション』も、こいつにとっちゃ興味がねぇだろうな」
つまり、必然的にコピーされるスキルは決まってくる。
「私の『無限の魔力』をコピーしてるってこと?」
「そういうこった!」
マホさんとイキールがどれだけ触手を破壊しても、すぐに本体に合体し元通りになってしまう。スライムとはいえあれだけ大きかったら、人間の攻撃なんて取るに足らないということなのか。
「コピーできるからってなによ! これでもくらいなさい!」
エレノアの両手が光ると、彼女の周りに無数の火が浮かび上がる。
「フレイムボルト・レインストーム!」
その全てが火炎の短矢となり、怒涛の勢いでスライムに飛翔した。
まるでマシンガンのように連射されたフレイムボルトは、まさにレインストームの名に相応しい。スライムに着弾して派手な爆発を起こす様は、確かに嵐のような激しさだ。
黒煙が舞い上がり、スライムの姿を隠す。
エレノアの息はあがっていた。あれだけ魔法を連発したのだから、無理もないだろう。
「やったか?」
イキールが叫ぶ。
「あれだけのフレイムボルトを撃ち込んだのよ。いくら大きくても、無事で済むはずがないわ」
荒い息遣いで言うエレノア。
どうしてこうフラグを立てるかね、この二人は。
案の定と言うべきか。
黒煙を突き破って飛来した触手に、エレノアとイキールは別々の方向に吹き飛ばされてしまった。
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