第24話 巨大スライム、やばい敵だった
エレノアの魔法に気付いたイキールが、はっとして視線を移す。
「援軍か!」
そうやって出来た隙に、スライムの攻撃が迫る。
青い半透明のスライムは、その形を自在に変え、太い触手のような部分を突き出した。イキールを圧し潰すつもりだろう。
「おらよ!」
イキールの前にマホさんが飛び込み、スライムの攻撃を迎撃する。グレートメイスを大上段から振り下ろし、スライムの触手を無数の破片に爆散させた。
飛び散った粘液は、意思を持っているかのように蠢き、スライムのもとに還っていく。
「手こずっているようね。手を貸すわ」
現れたエレノアに、イキールの顔が引き締まる。
「キミだったか。助かったよ。見事なフレイムボルトだった」
「それはどうも」
エレノア、マホさん、イキールの三人が並び立ち、巨大スライムと対峙する。
「目の前にするとやっぱり大きいわね……」
「ああ。それに極めて厄介だ。僕の『剣聖降ろし』が通じない。斬っても斬ってもすぐに再生してしまう。歴戦の騎士であるリッターもやられてしまった」
イキールの背後に倒れる騎士は動いていない。死んでいるのだろうか。
「じゃあどうするよ。こんなバケモンと戦ってまでメダルを取らなくていいだろ。潔く撤退するか?」
マホさんの提案に、イキールが噛みついた。
「馬鹿を言え! 誇り高きガウマン家の男が、スライムごときに背を向けられるか!」
「威勢は買うが、勝算はあるのかよ。坊ちゃん」
「ぐ……それは……」
口籠ったイキールを、マホさんは鼻で笑う。
「まぁ一応やってみっか。『シースルー・コンディション』を使う」
出た。マホさんのスキルだ。
村でも有名だった。彼女のスキルは医療系のもので、生物の健康状態や肉体の異常などを事細かに知ることができる。あのスキルのおかげで村人が病気にかかった時も即座に適切な対応ができたのだ。
マホさんがいなくなって村の人間達は困っていることだろう。でもエレノアの従者として相応しいスキルの持ち主が他にいなかったんだろうな。世間体というのは面倒臭いもんだ。
「まじかよ……こいつぁ思った以上にやべぇな……」
マホさんの顔色が変わる。
「スキルを持ってやがる。それも最悪なやつだ」
「スキルを?」
「どういうこと? マホさん」
イキールとエレノアも驚いた。
そして俺とサラも驚いていた。
俺はサラと目を見合わせる。
「なぁサラ。モンスターがスキルって、そんなことあるのか?」
「いいえ、ボクも初耳です」
ふるふると首を振るサラ。
俺は視線をエレノア達の方に戻す。
「普通はないことだが、ごくまれにモンスターがスキルを持っていることがある。モンスターが人を喰った時、その人間のスキルをそのまま手に入れちまうんだ」
「なんですって?」
「人喰いだと……まさかこんな下級のダンジョンで」
破片がすべて元に戻ったスライムは、行動を再開する。
「やつのスキルは『底なしの欲望』だ。目の前の人間のスキルを、コピーしやがる」
それが一体何を意味するのか。
マホさんの声は、絶望に染まっていた。
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