第9話 奴隷を買ったのだ

「今つけている首輪を外して、これをつけて下せえ。主従契約が更新されますので」


 おっさんは俺に首輪を手渡した。ルーン文字の描かれた金属の首輪だ。


「いいか?」


 俺が聞くと、サラは静かに頷く。

 首輪の付け替えを始める。なんか罪悪感。獣人と言っても人だ。動物じゃない。女の子に首輪をつけるなんてのは、元の世界じゃ経験しなかったしな。


「さぁ、これで終わりだ」


 サラの新しい首輪に、俺の名が浮かび上がった。


「これから、よろしく頼む」


 努めて笑顔で言った俺だったが、サラは相変わらず暗い表情のままだ。


 おっさんに三十万エーンを渡して店を出ると、ひとまず宿をとった。格安のボロ宿。所持金が残り二十万エーンということを考えると、贅沢は出来ないからな。


「サラ」


「はい。ご主人様」


 簡素なベッドに腰かけた俺は、床に跪くサラを見て眉を下げた。


「なによりもまず先に、風呂に入ってこい。ちょっと臭いがきつい」


「え……お風呂、ですか?」


 驚いた様子のサラ。やっと表情が変わった。


「なんだ? イヤか?」


「いいえ、とんでもありません。ただ、お風呂に入らせて頂けるとは、思っていませんでしたから」


 ああ、なるほど。この世界の奴隷はよほどぞんざいな扱いを受けているらしい。風呂に入ることも許されないとは。主人はそれでいいのだろうか。

 少なくとも俺は嫌だな。


「だってお前くさいもん」


「すみません……」


「ああ、違うんだ。臭いのは仕方ないから、ちゃんと綺麗にしてやりたいってことな。お前は俺の従者として振る舞ってもらうんだから、ぼさぼさの髪も整えて、それなりの服も買ってやらないとな」


「従者?」


「詳しくは後で説明するから。ほら、とっとと風呂に入ってこい」


「……はいっ」


 少しだけ元気になったサラは、急いで風呂場に入っていった。

 部屋に風呂がついているのは僥倖だった。格安の宿にしては、なかなかいいとこあるじゃないか。


 しかし待てよ。サラが風呂に入っている間、暇だなぁ。

 俺は思いつくままに風呂場に行き、浴室の扉を開く。


「ご主人様?」


 ちょうど、生まれたままの姿のサラが体を洗っているところだった。

 奴隷とは思えないほどのきめ細やかな肌。手足は細く、しかししなやかだ。やせ細っていないのは獣人だからか。つるぺたのロリ体型だけど、胸はほのかに膨らみ、お尻の丸みも女らしいラインを描いていた。


 ふむふむ。ただひたすらエロい。


 十歳くらいの女の子の裸を見て喜ぶのはどうかと思うが、今の俺は花の十三歳。これくらいが普通だろう。そうに違いない。


「あ、あの……」


「どうした。続けなさい」


「そんなに見られると、その、恥ずかしいです」


 サラは頬を赤らめ、体を隠そうとモジモジしている。


「ちゃんと洗っているか確認してるだけだ。気にするな」


 我ながら、言ってることは完全にセクハラ親父だ。

 でもな、よく考えろ。三十万エーンも払ったんだ。主人として、これくらいの役得はあっていいだろうよ。なぁ。

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