第34話 忠義の騎士ダニエル
ゴリラ―ドのアッパーの様な打ち上げるようなパンチでGさんはが吹っ飛ぶと同時に、また追うようにジャンプするゴリラ―ドを見て直人が動く。
「させるかよッ!」
直人の手に雷の巨大な槍が現れ、それをゴリラ―ドに向けて投げ放つ。
「サンダージャベリン」
追い打ちしようとしていたゴリラ―ドの脇腹を雷の槍が貫いた。空中で槍が突き刺さったゴリラ―ドはバランスを崩し墜落する。ドゴーンッという大きな音を立て落ちるとその衝撃で土煙でゴリラ―ド姿が見えなくなる。
すぐに土煙は消え、見えてきたゴリラ―ドの姿は今までの戦いで受けた傷でボロボロなのだが、その瞳は怒りに満ちており、まったく戦意の衰えを見せない。
攻撃を受けたゴリラ―ドは怒り、少し離れている直人へと矛先を向け走り出す。
直人から離れた位置にいるテルとダニエルが叫ぶ。
「先輩逃げるっスッ!」
「主、お下がり下さい!」
直人はGさんのピンチの際に走りだした為、周りにダニエルたちは居らず、一人なのだ。魔法使いの直人がゴリラ―ドと対峙するのは自殺行為なのだが、直人は逃げる素振りを見せないどころか、逆に身構えゴリラ―ドを迎え撃つ様相をみせる。
それを見ている【パルセノス】メンバーたちが驚いた様子で見守る中、シンシアは(何を考えているの直人君。勝ち目はないわ、速く逃げなさい!)と心の中で思うが、そんな思いを無視して直人へと迫ったゴリラ―ドが襲い掛かる。
ゴリラ―ドがパンチを放ち、誰もがダメだと思った次の瞬間、直人を殴ったゴリラ―ドのパンチがはじき返され、大きく体制を崩すゴリラ―ド。すると直人の態勢が下がりその右手には巨大な雷の剣が現れ、その剣でゴリラ―ドに突きを放つ。
自分の攻撃が弾かれるという、予想外の事で大きく態勢を崩したゴリラ―ドは避ける事が出来ず、雷の剣が胸を貫く。剣が突き刺さり、体に電気が流れ感電し、体から煙を上げるゴリラ―ド。
「フヴヴヴヴヴァァー」
余りの激痛に叫び声を上げるゴリラ―ド。電気が流れ一瞬の硬直を見せるゴリラ―ド、直人は左手に大きな炎の剣を出しゴリラ―ドの頭部を目掛けて全力で振り抜いた。
ゴリラ―ドは炎の剣を頭に受け、吹き飛ばせれる。直人はさらに追い打ちとして両手にフレアバーストを展開し打ち込んだ。吹っ飛んだゴリラ―ドに当たり大爆発を起こした。辺り一面に爆風が吹き荒れる。
吹き荒れる爆風の中シンシアが、
「何なの彼は、魔法使いじゃないの?」
と戸惑いの声を上げると、
「彼は間違いなく魔法使いですよ!それもとんでもない凄腕の!」
セルジュがそう言うとシンシアは驚いた様子でセルジュを凝視し、
「セルジュ! 今のが何か知っているの!?」
「はい、以前に魔法使いたちが話していたのを聞いたことがあります。今のはマジックシールドという魔法です」
それを聞いたシンシアとローゼが首を傾げ、シンシアが口を開く。
「聞いたことない魔法なんだけど?」
「そうでしょうね。魔法使いの中では使えない魔法と認識されてますからね」
「嘘でしょ!あれだけの事が出来る魔法なのよ!」
シンシア信じられないっといった様子でセルジュに問いかけると、
「使い勝手が悪いのよ。あれ一瞬しか展開出来ないんだって、その上、中級魔法なのに詠唱難易度が上級らしいわよ。ギルドに集まってた魔法使いがゴミ魔法と言ってたわよ。彼らに今のを見せてあげたいですね」
セルジュはそう言い笑みを漏らした。
シンシアとローゼはセルジュの言っている意味を理解し息を飲む。それは、敵の攻撃のタイミングに合わせ上級魔法を発動させなければならない上に、その小さなシールドで敵の攻撃を防がなければならないのだ。
「色々驚かされるわね。でも彼らの頑張りもここまででしょうね」
シンシアがそう言っていると土煙がきえ、ゴリラ―ドが立っている。先程よりもよりボロボロであるが、先ほどの直人の炎の剣の攻撃が目に当たり、右目を失っている。
その形相は鬼の様であり、直人を射殺さんばかりに睨みつけている。
「ゆるさんぞッ!よくも俺の目をッ!誰一人、誰一人生かしては帰さんぞッー」
怒りをあらわにし、叫ぶゴリラード。
「いかんッ!総員、主殿をお守りしろッ!」
「「「ウオォォォォォー」」」
ダニエルの指示で雄叫びを上げながら走り出すスケルトンたち、それを見たゴリラ―ドが、
「骨共がお前たちなど物の数ではないわッ!」
そう叫び直人たちの方へ向かって行くゴリラ―ド。
直人の横をスケルトンたちが駆け抜けていく中、直人は突然手を掴まれた。
「主殿、早くお逃げ下さい!」
手を掴まれダニエルにそう言われ直人は、
「ダ、ダニエル、しかしスケルトンたちが!?」
「残念ですが、我々には奴は止められません。彼らが時間を稼いでいる間に」
ダニエルが真剣な様子でそう言い直人の手を引くが直人は、
「な、何をバカなっ―― そ、それは捨て駒と言う事だぞ。わかっているのか!?」
ダニエルは直人を見つめたまま動かないが、その後ろに立っている二匹のスケルトンが深く肯いた。それを見た直人は彼らの覚悟を知り何も言えなくなり、ダニエルと共に後退し始める。
先陣を切って突っ込んで行くスケルトンが次々と砕けていく。ゴリラ―ドとスケルトンには埋めようのない差があり蹂躙されている。だが彼らの意思は強く、諦める事無く果敢に挑み続けている。
「イカセナイゾ」「アルジドノノタメニ!」「ヤツノ、ミギガワヲネラエ!」
そんな事を言いながら戦い続けるスケルトンたち、その中には部位欠損したモノも多く見られ、中には下半身を失い、それでもしがみ付くモノの姿まであった。
それを見て直人は思う(すまない。君たちをスケルトンと思い軽く考えていた。許してくれ)直人はスケルトンたちの己を顧みらぬ忠誠に、その純粋な在り方に心を打たれ、直人の瞳には涙が滲んでいた。
「約束しよう!その忠誠に必ず報いるとッ!」
そんな感傷的な時でも直人は厨二病であった。
スケルトンたちの奮闘も空しくスケルトン軍団は瓦解し突破を許してしまう。後退を先導していたダニエルは、反転し直人の後方に立ち止ると、
「お逃げ下さい主殿、ここはこのダニエルが抑えますゆえ」
真剣な様子で言うダニエルに直人は、
「どの道逃げきれまい、ならば共に戦い活路を開くしかあるまい!前衛は任せるぞダニエル」
直人の予想外の言葉に一瞬言葉を失った後、ダニエルは胸を張り、
「イエス、マイ・ロード」
そう高らかに答えゴリラード方へと身構える。
そんなダニエルへと迫り来るゴリラ―ドは、
「邪魔だぁー骨ぇッ」
大きく右腕を振り上げ殴り掛かる。ダニエルは盾を体の前へと構え、一気に前に出た。ゴリラ―ドの腕が伸び切る前に盾を前にし、体ごとパンチへとぶつかった。凄まじい衝突音と共に、ダニエルは体ごと後方へと押し戻される。
「ぐぬぬ!」
凄まじい衝撃を受け、(振り抜く前に当たったというのに、なんと言う威力だ! だが受け止めて見せる!)普通に受けたのでは受け止められないと判断したダニエルは、振り抜く前に当たりにいく事で威力を殺したのだが踏ん張る両足は地面を滑り下がっていく。
「うぬぬぬぬぬっ」
必死に踏ん張るダニエル。地面を滑っていたダニエルの足が止まる。ダニエルがゴリラ―ドのパンチを受け止める事に成功する。そんなダニエルの後ろから直人が飛び出し、
「よくやったダニエル」
飛び出した直人の右手には、先ほどと同じ様な大きな雷の剣が握られている。この剣はライトニングセイバーと言う魔法で雷の剣を作り出すと言うものだ。先ほどの炎の剣もやはり魔法でフレイムソードと言う。
飛び出した直人はライトニングセイバーで突きを放った。ゴリラ―ドの攻撃を受け止めたダニエルの背後から飛び出し、抜群のタイミングで放った突きであったが、ゴリラ―ドに身を反らし躱されてしまう。
「なにッ!」
躱され驚く直人、躱したゴリラ―ドは腕を振り被りパンチの攻撃モーションを取っている。それをみた直人は焦り、左腕にフレイムソード出し、ゴリラ―ドへと振り下ろす。
攻撃のモーションを取っていたゴリラ―ドが下がる。フレイムソードが空を切る。(しまった!誘われた)直人がそう思うがすでに遅く、ゴリラ―ドは攻撃を放つ。
「主殿ッ!」
ダニエルはそう叫び、直人を押しその場所へ割り込んだ。
割り込んだダニエルにパンチが襲い掛かる。
「ガハッ」
骨の砕ける音と共に、そのパンチはダニエルの隣にいる直人もろ共吹き飛ばした。
強い衝撃を受け倒れた直人は起き上がり、自分を庇ったダニエルを探す直人。ダニエルは直人のすぐ近くに倒れていた。
その姿は無残なものだった。左腕は砕け無くなっており、着ていた鎧の腹部が拉げ、腹部から下が失われていた。トレイドマークとも言える、ニワトリのトサカの様なものの付いた兜は外れ転がっている。
「ダ、ダニエル……」
名を呼ぶ直人。だがその姿にそれ以上の言葉が出てこない直人。
ダニエルは名を呼ばれたことに反応したのか、首だけを動かし直人の方を見ると、
「お逃げ下さいあ――」
喋っていたダニエルの頭がゴリラ―ドによって踏み砕かれその言葉は遮られた。
「き、貴様」
直人は怒りをあらわにし、ゴリラ―ドを睨みつける。そんな直人を気にした様子もなくゴリラ―ドは、
「ごちゃごちゃとうるせえ骨が」
踏み砕いたダニエルを見ながらそう言い終えると、直人の方を見るゴリラ―ド。睨みつけている直人を見てゴリラ―ドはニヤリ笑い、
「人間お前は簡単には殺さんぞ」
睨み続ける直人だが、内心では(ヤバいな、腕が上がらない。どうする?)と考えている。先ほどダニエルに庇われたものの、その衝撃で左腕を痛めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます