第18話 買い物 親友は気が短い
ダニエルを帰還させた直人たちは、素材を売った金を受け取る為に冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに着くと直人がテルに声を掛けた。
「テル、Gさんと銀さんを連れて、冒険者登録をして来てくれないか?」
「いいっスよ。先輩はどうするんスか?」
「俺はカイとお金受け取って来るよ。Gさんと銀さんそれでいいですかね」
「うむ」
「おう」
二人の返事を聞くと直人はカイの方を向き、
「カイ、じゃ行こうか」
こうして直人たちは二手に別れたのだった。
直人たちは買い取り専用の入口へと入っていく。中に入ると奥でオジサンが作業していた。オジサンは直人たちに気づくと声を掛けてくる。
「おう、お前らか買取り査定は終わっているぞ。ちょっと待ってろ」
オジサンはそう言いうと、テーブルの上に置いてある書類の中から一枚の紙を取り出し、直人へと渡した。その紙には買取金額の詳細が書かれていた。
直人は買取金額を見て驚いた。合計金額の所には163,300ゴールドと書かれいた。
直人たちは事前にアラン達から異世界では一般的な食事だと3から5ゴールド程度、で宿での一泊が30ゴールド程だと聞かされていたのだ。
「えっマジで!」
直人が驚くとカイは直人の持つ紙を覗き込む。
「はっ? オッサンこれ間違ってねえか?」
「あっとるわ! 失礼な、まだボケちゃいねーよ」
直人とカイは互いの顔見合わせると、
「やったなカイ、これで装備が買えるな!」
「だな、案外異世界はちょろいな」
「で、どうするんだギルドの口座に入れとくか、それとも今持って帰るか?」
直人がカイを見ると、カイが口を開く。
「直人とりあえず半分だけにしないか?」
「そうだな、じゃオジサン半分は口座で半分は持って帰ります。後硬貨は使いやすい様に細かくしてもらえませんか?」
「おお、分かった。ちょっと待ってろ」
と言うとオジサンは奥へと入って行った。
しばらくすると奥から袋を抱えてオジサンが出て来た。
「またせたな、半分の81,650ゴールドだ」
直人はオジサンから袋を受け取った。
「じゃあ、またねオジサン」
と言い出て行こうとした直人をオジサンは呼び止めた。
「おい、悪いこと言わねぇ。金は数えとけ。そんな事だとその内、取返しの付かない失敗をする事になるぞ」
オジサンは無警戒で他人を信じる直人を心配し、安易に誰でも信じるなと言っているのだった。直人たちはお金を数えるとテルたちと合流するため、その場を後にした。
直人たちがテルたちと合流する頃には冒険者登録が終わっていた。
「もう、終わったのか。早かったな」
と直人がテルに尋ねる。
「それがGさんが、説明はいらんって言いだしたんスよ。それでもう終わったんス」
テルが、そう言うと後ろにいたGさんが、
「説明など不要。ルールとは、自分の中にあるものよ」
と自信満々に語っていた。
その後、直人たちは全員で武器屋を見て歩いた。だがGさんの探す日本刀が見つからずリカルダ中の武器屋を探し周り、今最後の一軒へとたどり着いた。
「ちと邪魔するぞ」
そう言いGさんを先頭に直人たちは店の中入った。中には若い女性が店番をしていた。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
尋ねられるとGさんが答えた。
「日本刀を探しておる」
「日本刀ですか? 聞いたことがありませんね」
Gさんが日本刀の詳細について説明すると、
「主人に聞いてきますね」
と言い中へと入って行った。しばらくすると女性は男性と共に出て来た。
「この店の主人のジャックです。お聞きした武器は以前父が作っていたのですが工程の大変さから採算が取れず、今は作っておりません」
「依頼が来てから作ると言う事かの?」
「いえ、私は作る事はできません」
「お父上は今どちらに?」
「父は他界しました」
「うむ、では作れる者を知らぬか?」
「心当たりはありませんね。リカルダにはおそらく居ないかと、今や失われつつある技術だと思います」
それを聞きGさんが考え始める。しばらく考えると何かを思いついた、ハッとした様子で、
「無いのならわしが作るしかあるまい!ジャック助手しろ、なに金なら持っておる。では始めるぞジャック」
「ちょっちょっと待ってくださいよ」
抵抗するジャックを連れてGさんは中へと入って行った。
「Gさん中に入って行ったぞ。どうする直人?」
カイが尋ねると直人は困った顔をして、
「さあ? どうしよう? 出来るまで待つか?」
「冗談だよな? 何時間待つつもりだ?」
と言うカイの意見もあり、直人たちは銀さんの調理器具を見に行く事になった。
調理器具関連の置いてある店に来ると直人たちは店内を一通り見て回った。皆が色々な商品を楽しみながら見ている中、銀さんだけが店員に尋ねながら真剣に見て回っていた。
一通り見終わると銀さんは直人へと尋ねた。
「調理器具の予算はどの位を考えているんだ?」
直人は一瞬考えて、
「銀さんはいくら位必要だと考えていますか?」
「そうだな、調理器具、食器やらもろもろ合わせると1000ゴールドあれば足りるな。 ただ出来れば魔道具のコンロとオーブンが欲しいんだがな。あれがあれば料理の幅が大きく広がるからな」
「さっき見ていた魔道具ですか。買わないと料理出来ないんじゃないんですか? そんなに高かったんですか?」
「魔道具はピンキリだな、安い物で2000ゴールドから、高いものは万を超えてるな」
「やっぱり高い方が良いんっスよね?」
と、テルが尋ねると銀さんが答える。
「まあな、高い方が当然性能はいいんだがな」
「じゃあ買いましょうか! みんな美味しいもん食べたいだろ!?」」
と直人がカイたちに振ると、
「そうだな、買っちまおうぜ! 金はまた稼げばいいだけだからな」
「そっスよ、そっスよ。また稼げばいいんスよ」
テルがそう言うとカイは笑いながら、
「お前はまだ何もやってないだろうが」
「バレたっスか、あはははっ」
そのやり取りに一同は大笑いしたのだった。
買う事を決めた直人たちは店員に声を掛けた。
「はいはい、何でしょうか?」
「あの、魔道調理器具について聞きたいんですけど」
直人が魔道調理器具について尋ねると店員の男は露骨に嫌な態度で、
「魔道調理器具についてですか?」
言い放つその態度は、貴方これ買えるんですかと、言わんばかりの態度だった。
店員の説明によると、価格によってコンロの場合火口の数が増え、オーブンだと容量がなどが変わるとの説明だった。店員の態度は、説明の最中でも悪く、カイは機嫌をかなり悪くしていた。
直人が商品の違いについて尋ねている時だった。我慢の限界を超えたのかカイが低い声で言った。
「おい、お前さっきからふざけてんのか! なんなんだその態度は!」
カイが怒ると店員は一瞬驚くだけで、さほど慌てた様子もなかった。逆に直人の方が驚いていた。直人は説明を聞くことに集中していた為カイの様子の変化に気づいていなかったのだ。
それに気づいていた銀さんとテルはあちゃーついに怒っちゃたよー的な様子で苦笑いを浮かべていた。
「ふざけてないですよ。普通の接客態度ですが!?」
落ち着いた態度で店員がそう言うとカイの怒りはさらに増し、
「その態度がふざけてるって言ってんだよ!」
怒りに任せて店員に飛びかかろうとするカイを直人がしがみつき止めた。
「おい、落ち着けカイ。なに怒ってんだよ!」
「こいつがふざけてっからだろうが」
直人が止めているのを見てテルも背後からしがみつき止めるのを手伝いに入る。
「カイ先輩落ち着くス! 暴力はよくないっス」
「おい、はなせ!」
とカイが怒鳴っていると、年配の太ったオジサンが出てきた。
「どうなされましたお客様、何か問題でもありましたか?」
オジサンは丁寧な物言いで尋ねてくる。
「こいつがバカにした態度で接客してっからだよ」
「それは大変失礼致しました。カマルお客様に謝って」
ニコニコした感じの人の好さそうなオジサンだったが、カマルと呼ばれた店員の方を振り向いたその表情は鬼の形相そのものだった。
当然この表情は直人たちの角度からは死角となり見えていない。そんな形相で睨まれたカマルは突然態度を変えカイに謝罪した。
「お客様大変申し訳ございませんでした」
それを見てカイは怒りを鎮めて、
「わかりゃいいんだよ」
と言い収まった。
その後分かったのだが、オジサンはこの店のオーナーだった。オジサンとカマルに接客されながら商品を購入していった。
次々と高い商品を購入していく直人たちをみてカマルは驚いていた。最終的には23,580ゴールドの買い物した為オジサンはニコニコだった。最後に直人たちが購入したものを持って帰ろうとしていたらカイがカマル見て、
「これだけ買ったんだ。当然、配達してくれるんだろ。大事な料理道具だからカマルくんに任せるよ。責任を持って届けてくれ」
そう言うとカイはオジサンの方を見ると、
「もちろんですよ。カマルくんが責任を持ってお届けします。いいですねカマルくん」
「も、もちろんですよ」
カマルくんはその大量の商品に冷や汗をかいていた。
それを見ていた直人たち三人はカイの性格の悪さを再確認するのだった。そもそも銀さんがアイテムボックスというスキル持ちであり、配達の必要はないのだから。
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