第17話 料理人とスケルトン
直人たちは日本での一般的な老人のイメージから、かけ離れた老人の登場に驚いていると、老人は辺りを見渡しながら呟く。
「どこじゃここは?」
老人はキョロキョロし直人たち方を向き尋ねる。
「わしは、佐々木剣十郎じゃ。お主らは誰なんじゃ?」
直人たちは聞き覚えのある声に安心する。それはゲーム中に聞いていたGさんの声だった。
最初に口を開いたのはカイだった。
「確認だが、あんたGさんだよな?」
老人は一瞬考える素振りを見せた後に、
「その声は、お主カイなのか?」
「あぁ、カイだよGさん」
「カイなのか。なんじゃお主目つきが悪いの~ふははっ、だがゲームの中の顔より今の方がええ顔しとるわ、はっはっはっ」
直人たちはリアルでGさんと会った事がなかった為、お互いの顔を知らなかったのだ。
「直人です。お久しぶりです。高齢で大柄とは聞いていましたが、まさかここまで大きく逞しいとは想像出来ませんよあははっ」
「おぉ、直人か。お主はゲームと同じで細いの~。少しは鍛えた方がええんじゃないか?ほれ、わしの様にな」
Gさんはそう言うと上着を両手で握り引き裂いた。Gさんの体は強烈だ。全身の筋肉が割れており見事な逆三角形を描いていた。だが、決して線が太い訳ではなく、無駄なく鍛えあげられた研ぎ澄まされた肉体である。
その体を見て直人は苦笑いを浮かべ、
「ハハハ、高齢とは思えない体ですね」
「はっはっはっ、鍛えておるからのぉ」
Gさんはテルの方を向き、
「あれは誰なんじゃ直人?」
「あれはテルですよ」
「おお、テルか。元気にしておったか?」
「Gさんお久っス、元気にしてるっスよ。それにしても凄い体っスね」
「肉体こそ戦いの基本じゃからのぉ」
この時三人は、日本であんたは何と戦っているんだと、心の中で思うのだった。
「で、ここはどこなんじゃ?」
「それなんですが、今銀さんも招待してるんで説明は揃ってからでいいですか?」
と直人が尋ねるとGさんは嬉しそうに、
「銀の奴も来るのか、それはええの~。銀の飯は美味いからのぉ! では待つとしよう」
それからさらに待つこと数分、銀さんがやって来た。
外見は黒目黒髪で褐色の肌。ぶっきらぼうな性格の為なのか、つねにその表情は怒っている様な、不機嫌であるような印象うける。昔ながらの職人さんといった感じである。銀さんはその性格からかこちらに来ても落ち着いた様子だった。
二人が揃ったので直人たちは事情を話し始めた。
話し終えると、
「異世界か~、楽しみじゃ。どんな強者がおるのかのぉ。まさか再び戦いの日々が送れようとは、長生きはしてみるもんじゃのぉ」
直人はそんなGさんに、若干呆れながら尋ねる。
「じゃあ、Gさんは協力してくれるってことですか?」
「うむ、任しておけ」
「ありがとうございます」
そのやり取りを見たカイが、
「流石Gさん、あんたならそう言ってくれると思ってたぜ! これからもよろしくな」
「うむ、よろしく頼む」
と言い二人は近づくとバシッと大きな音を立て、手を握り合わせていた。
直人はそんなおかしなテンションの二人を無視して銀さんへと声を掛けた。
「銀さんはどうですか? 手伝ってくれますか?」
「俺は料理さえできりゃどこでも構わねえよ。……まあ、お前たちだけじゃ心配だからな。付きあってやるよ」
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
「別に好きで付きあうんだ、感謝する必要はねぇーよ」
銀がそう言うとテルが嬉しそう声を掛けた。
「銀さんこれからもよろしくっス。また美味しいご飯期待してるっスよ」
「美味い飯を食わせてやるよ。期待してろ」
こうしてメンバーの召喚を終えると、互いにステータスを確認しあうのだった。
ステータス
名前:佐々木剣十郎
種族:人間
性別:男
年齢:98歳
職業:サムライ
称号:異世界より召喚されし者
Lv26
HP :A+
MP :F
攻撃力 :S+
防御力 :B+
素早さ :S-
器用さ :S+
賢さ :E
運 :C
能力 :心眼 燕返し 居合技
アビリティ:剣術Lv10 槍Lv8 弓Lv8 格闘Lv8 鍛冶Lv8
ギフト :肉を断ち血を啜るLv3
ステータス
名前:江戸前銀二
種族:人間
性別:男
年齢:32歳
職業:料理人
称号:異世界より召喚されし者
Lv26
HP :B+
MP :D
攻撃力 :B
防御力 :C+
素早さ :B+
器用さ :A
賢さ :C−
運 :A−
能力 :鑑定眼 食材断絶力アップ
アビリティ:調理器具Lv10 二刀流Lv7 料理スキルLV10
ギフト :SPアイテムボックスLv3
ギフト【肉を断ち血を啜る】
与えたダメージに応じてHPを回復する※血がないモノでは回復できない。
ギフト【SPアイテムボックス】
アイテムボックスの上位版で入れた物の時間を任意で停止する事ができる。
確認が終わると直人たちは召喚するするべく配置に着く。直人の両脇にはカイとGさんが状況に対応出来る様にスタンバイしている。
「じゃあ召喚するぞ!」
直人はそう言い仲間たちの顔を見ていく。皆と目線が合うと無言で頷く。
直人はスマホを操作して召喚の文字をタップした。
すると魔法陣が床に浮かび上がった。そう直人たちは謎のモンスター、ダニエル・バートンを召喚しようとしているのだ。直人たちは最悪な状況まで想定し、場合によっては召喚されたモンスターを、カイとGさんで倒すという事になっていた。
魔法陣が輝き光が収まると、そこには西洋風の鎧を装備したスケルトンが立っていた。
直人たち全員がモンスター出現に戦闘態勢をとる。いや一人だけ驚き戦闘態勢をとっていない者がいた。それはカイだった。
「ほぉー、スケルトンか」
Gさんはそう言うと一歩前に進む、その手には棍棒が握られ全身から闘気が溢れ、戦闘モードに入っていた。それを見たカイが慌てて止めに入った。
「待て待て、Gさん」
突然止めに入るカイに困惑するGさん。
「なんじゃカイ! 邪魔をするでない」
「ちょっと待てって!知り合いかもしれないんだって」
「なんじゃ知り合いなのか!?」
「かもしれないって話だ」
カイはそう言うとスケルトンに声を掛けた。
「俺の事がわかるか? あの時のスケルトンだよな?」
「覚えてくれていたんですね。そうです、あの時の者です」
スケルトンは礼儀正しくお辞儀をして、
「あの時は名も名乗らず失礼しました。ダニエル・バートンと申します。以後お見知りおきを」
あまりに礼儀正しい、その言葉使いと態度にカイは驚きながら、
「あぁ、……カイだ。よろしくな」
ダニエルはカイに挨拶をし終えると直人の前に騎士の様に跪き、
「主よ。ダニエル・バートンはこれより先、あなたと共にある事を誓う」
ダニエルは誓いを終えると立ち上がり、直人へ尋ねる。
「それで、私は何をすればいいのでしょうか? 主殿」
直人は突然の事態に困惑していた。しかし、流石は厨二病の直人と言ったところか、次の瞬間には自信に満ち溢れた表情になっていた。
「いいだろう、共にある事を許そう。だがなダニエルよ」
「はい、何でしょう主よ」
「お前がここに居ることが不味いと思わないか?」
ダニエルはスケルトンな為、表情はわからないが直人の言いたい事を理解できずに首を傾げる。
「スケルトンが街の中にいると、まずかろう?」
理解してくれないダニエルに再度遠回しに伝える直人。
「はあ?」
だか、ダニエルは首を捻りながら生返事をするだけだった。その姿を見た直人は
「つまりだな。帰ってくれないか?」
と、察しの悪いダニエルに直球で伝えた。
「……了解しました。主よ」
ダニエルは寂しそうにしつつも、了承してくれたので、直人はダニエルを帰還させた。
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