第6話 ゴブリン肉とお魚!

 その後も何度かゴブリンとの戦闘になったが、直人たちはどうにかそれらを撃退していた。


 気が付くと日が暮れ始めていたので、野営するためカイは焚火用の木を取りに行き、直人とテルは晩御飯の準備している。結局食料は調達出来なかったので、ゴブリンをさばいていた。


「先輩マジでコレ食うんスか?」


 テルは凄く嫌な顔をしてゴブリンの肉を見ている。


「鑑定したら毒はないんだろ?」

「毒はないっスけど臭いっスよ」


 テルの言う様にゴブリンの肉は臭い。食べれるのか疑うレベルで臭い。だが食える物はこれしかない!背に腹はかえられない!直人は希望的観測を口にする。


「しっかり焼けばそんなに気にならなくなるだろ」

「そうなんスか?そうゆうもんっスか?」

「たぶんな、カイが帰って来るまでに焼いてしまおうぜ」


 直人たちはさばいた肉を、作った串に刺して焼き始める。ゴブリンの肉は脂を含んでおり、見た目はいい感じに焼けてきて……肉汁がじわじわっと滴り、事態は急変した。肉から油が落ちると火の勢いが増し煙が立ち込め、臭いが増した。


「うわっ!せ、先輩っ!さっきよりも臭いすごいっスよこれ!」

「やべ!くっさ、なにこれ!」


 テルは鼻をつまみ、顔をしかめ手をバタバタさせ


「ヤバいッス!ヤバいッス!もう食べ物の臭いじゃないッス!」

「ホントにやべぞ!まじくせえぞこれ!」


 そんなやり取りをしていると


「あはははは!お前ら何やってんだよ。ははははは腹いてぇ」


 気づくとカイは戻ってきていて腹を抱えて笑っていた。そんなカイを見たテルは、


「笑い事じゃないっスよ!マジ臭いんっスよ」

「おいテル!肉に火ついてんぞ!」

「ヤバいっス!燃えてるっス!」


 テルは慌てて火のついた肉を取り


「あっつ!あっつ!熱いっス!」


と言いながら火を消そうと振っている。


「はははは!やばい!やばい!マジ腹いてぇ!」


 そんなハプニングがありながらも、直人たちは肉を焼き終えた。直人たちはそれぞれ肉を取る。誰も食べようとしない。直人が尋ねる。


「誰から食う?」


 それぞれが顔を見合わせ、カイは一瞬考える素振りを見せて


「同時に食べるか?」

「そうだな」

「そ、そうっスね」


 三人が肉を口に運ぶ。噛むと肉汁と共に臭みが鼻につき、カイは顔をしかめる。


「不味いな!」

「あぁ不味いな」

「不味いっていうより臭いっス!」


 そうして、三人が同じ答えだったことで、不意に笑いがこみ上げる。


「ぷぷぷ、だよなーゴブリンの肉だもんな」


 直人がそう言うと、


「はははは、ひでぇ味だったな」

「でも、楽しいっスね」

「あぁ」

「そうだな」

「食うか」


 カイがそういい直人たちは食べ始めた。


食事を終えるとカイがテルに


「お前一旦帰らなくていいのか?」

「帰っておきたいっスけど先輩が心配っスからね。二、三日くらい大丈夫っスよ、多分」

「そうか、俺も帰らなくて問題ないな」


 そう言う二人に軽く礼を述べ、直人たちは交代で見張りをしながら夜を過ごした。




 日が昇り始め、あたりは明るくなり始めた。カイは篝火の近くの岩に座り、見張りをしている。カイは辺りを見渡し、


「そろそろ起こすか」


 カイは岩から飛び降り眠っている直人に近づき、肩を揺する。


「おい直人、起きろ。もう朝だぞ」


 声を掛けられ、肩を強く揺すられたことで目を覚ます直人。


「あぁ、もう朝か」


 カイは直人がぼんやりとしてるのを見て、


「川で顔でも洗ってきたらどうだ」

「あぁ、洗ってくるよ」


 直人は小川の方へと歩いて行った。


 直人が川で顔を洗っていると、


「先輩、おはようっス」


 振り返ると寝ぼけたテルが立っている。


「テルか、おはよう」


 テルも川で顔を洗うがまだ寝ぼけている様で川をボーっと見ている。すると何かに気付いたのか、


「――ッ!!」


 直人はそんなテルが気になり尋ねる。


「どうした!?」

「魚がいるっス……」


 テルの視線の先に目を向けると魚がいた。


「……なんで気づかなかったんだよ、俺ら……」

「ゴブリン食う必要はなかったスね」

「だな、朝飯は魚にしような」


 直人はカイの方に戻り声をかける。


「カイ、朝食は魚にしないか?」


 カイは一瞬考え理解したのか


「あぁ、川に魚いたな。どうやって捕るんだ?」

「おいおいカイ、ここは剣と魔法のファンタジー世界だぜ、無論魔法でだろ」

「そんな魔法あったか?」


 カイは肩を竦める。


「そ、それは……氷属性のアイスアローでいけるんじゃね!?」

「OKやってみるか」


 直人は川に戻ると、魚に向けて手を突き出し、魔法を放つ。氷の矢が三本現れ飛んでいき魚に刺さった。浮かんで川を流れる魚を、下流にいたテルが拾って持ってくる。矢が二本刺さっていた。一本は外れたのだろう。


「捕れたっスけど、もうちょっとどうにかならないっスかね?」


 魚には大きな風穴が二つ空いている。それを見てカイが


「矢は一本だな、あと細くできないか?」

「やってみる」


 直人は一本の細い矢をイメージしてアイスアローを使ってみると、イメージ通りの矢を打ち出すことができた。それを見たカイは


「ナイス。どうやったんだ?」

「イメージしただけだな」

「なるほどな、ゲームと違って調整できるんだな」


 直人たちはそれからも魚を捕り、焼いて食べた。ゴブリンの肉とは違い美味しかったが、正直なところ調味料が欲しいと思うのだった。


 食べ終わると、直人たちは街を目指して進み始めた。

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