第24話-オレは大人じゃないよ
少し上擦った声は、自分の耳にも入り羞恥心から来る熱がオレ自身を襲った。
『かな…と?』
声が震える、
顔が熱い、
流れている空気が甘く感じるのはきっと…気のせいだ
「目、逸らさないで…誠」
あまりの恥ずかしさに視線を伏せれば、今度は壊物を扱うかの様にそっと両頬を包み、少し上を向けさせられて、
触れている手は…熱を持っていた。
『っ…、』
「やっとこっち見た。よそ見なんてしないでよ」
『佳名斗…近い、んだけど』
鼻と鼻が当たる距離。
なんで…こんなことになったんだっけ
ぼぅっ、とする頭の隅でそんな事を考えられるのは決して余裕がある、とかではなく。寧ろ…、
「ふはっ、…顔、真っ赤」
『なっ!…そ、それは佳名斗のせいでっ、』
余裕なんてあるはず無い。だって、こんな…
こんな顔した佳名斗をオレは、知らないから。
––––––––
「うん。オレのせい、か。
オレは無知で無欲な誠と違うから…狡い事も平気でできる。
今の関係性にも満足出来るほど、オレは大人じゃ無いよ」
『な…に、言って…、っ、』
するり、と頬を撫でられ咄嗟に眼を瞑る。
閉眼する事で、今の佳名斗から逃げられる…そんな気がした。
やましい事があるから。
オレがみんなに隠し事をしてるから、
だからこんなにも怖い、と恐怖心を抱くのか。
嘘つきなオレを見ないで、
と、心が軋めいているのだろうか。
「誠だけがオレの事を忘れずに覚えててくれたら…
オレはそれだけで頑張れるんだよ」
吐息混りに吐露された言の音を、この時のオレは半分以上理解出来ていなかったのだと痛感する事になるのはまだ先の話し。
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