第20話-好きでしょ


***


店員の『いらっしゃいませー』という声を聞き流し、向かったコーナーはプリンやヨーグルト、ゼリーなどが置かれた場所。


季節限定!と書かれた文字や、ポイントアップ!という文字を見た後、


手にしたのは、フルーツが沢山入っているゼリーのみ




早くも放課後、オレたちはりとのお見舞いがてらコンビニで何か買う事にした。いつも皆で朝、待ち合わせをする場所、それがここである。


って言っても、時間が合わなかったら先に学校に行く事もあり、毎日一緒と言うわけでもなく。


ただ先に学校へ行くと、毎度佳名斗が大騒ぎするらしい。毎回、襲われてるかも!とか言い出して、電話にたまたま気付かないで出なかった事があったけれど


大暴走した佳名斗を宥めたらしい、りとと大賀がやつれながら登校して来た記憶はまだ新しい。


まぁ、最近はやっとそれが減ったが、


必ず先に行く時はメールしろ、と何度も言われている



「何買うか決まったー?」


『あ、佳名斗。うん、これにしようかなーって』


「お♪いいねぇ、オレはこーれっ」


『…期間限定ケーキ味焼きそば?…美味しいの、それ?』


「いやぁ絶対まずいっしょ」



市販の風邪薬と、焼きそばを見せてきた佳名斗。

市販薬は間違いなくりとに買うのだろう、


そしてオマケで買うのかメインで買うのかは分からないが、どんぶり型のプラスチックに入った焼きそばのパッケージには、でかでかと『ケーキ味』と記されていて、


眉間に皺が寄る。


佳名斗が食べるのかな…、ケーキ味…。


思わず想像して、軽く頭を振った。正直未知の世界だ。そんなオレを他所に、



「んっとー、後は特にないかな…あ、」


『?』


「肉まん、好きだったっけ」


ふっ、と目元を和らげ優し気に笑う佳名斗。

それを間近で見てしまった店員さんは頬を染め、固まってしまった話は…省略しよう。


にしても肉まんが好き…って、りとがかな?



『佳名斗、割り勘しよ?ゼリー代いくらだった?』


「んぇ?あー…いいよいいよぉ。見舞いに行こうって誘ったのオレだし、気にしないで!」



会計を済ませた佳名斗に続き、店を出る。

佳名斗について行きながら小銭を出そうとした手を、やんわりと止めたのは他でもない佳名斗で、


緩い笑みを向けてくる。




「それに、2人で帰れてるオレのが得しちゃってんだよねぇ」


『得…?何が?』


「ふふっ、ひっみつー!あと、…はい」



そう言って差し出されたのは温かい肉まんで、



『え…?』


「好きでしょ、それ」

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