第18話-この熱を

朝起きてSNSを確認し、その後、他のアプリも流す様にして確認だけ行う。


日課、というより癖みたいなもの


色んな人の情報が身近で飛び交う中、どれだけ今、注目されているのか。それは簡単にも、数字が教えてくれる。


例えば何気に、男子高校生が『腹へったー』と呟き、その日の内に“いいね”マークが6個付けば、一般の学生からすれば、いい方だ。逆に、芸能人が同じ内容で、同じ時間帯に呟き、1日の中で6個しかいいねが付かない場合、


業界関係者の中では笑われる。


下手なお笑い芸人でも、1ツイートに60個のいいねが少なくとも付くもので、


悲しいかなそれが人気の度合いを教えてくれる



みんなが携帯を持つのが当たり前の様に。

サイトを開くのが当たり前な時代で、


他者同士、気軽に繋がれるのがSNSである。


と、オレは認識している。




そして、そんな中。オレは、オレたちはプロの大手に向けた挑戦状を叩き付ける事となった。


誰もがまだ挑戦していなかった新企画。


24時間リレー配信。


ダウンロードしているアプリ、SNS。全てのサイトで布石は打った。グループでの活動の利点、長所はそれぞれが繋がったリスナーさんたちを、配信へ誘導できる事。



「ねぇ見た!?ミラがリレー配信するって!」


「見た見たっ、もう楽しみっ」


「24時間配信、絶対寝ないで聞くー!」


「当たり前じゃん、聞き逃したら」




“––––––––––絶対後悔するもんっ”




効果は上々。


にやけそうになる顔を押し殺し、ポケットへ手を突っ込んだまま学校の校門をくぐり抜ける。


時に甘く

時に癒しを

時に刺激的な配信を。


昨日、投稿したSNSの投稿はきっと他の歌い手達に対する挑戦状へなったはず。


だって雪久さんから『煽って煽って煽りまくれ、誠きゅん♪』なんて言われてしまえば、


煽り文句しか言っていない文章になるのは必然で、


トレンド入りへとなった。





『オレたちから君たちへのラブレター


challenge miracleであるオレと君

こっそり逢瀬しよう。

君の話を聞かせて?


24時間配信企画決定。歌い手初の挑戦は今始まったばかり。君はオレのもの。


だから、よそ見しないで?◯月◯日配信開始


#ミラ24時間配信のお知らせ』




煽るだけ煽った。

後は、24時間配信までの自枠で宣伝を続ける事。


まぁ、他にもする事が色々あるんだけど…


「上手くいったね、誠っち」


ぽんっとオレの肩を叩いたのは横を歩いていた、佳名斗でニヒっと歯を剥き出して笑っていて、


『うん。このまま配信までこの熱を持って行きたいな』




あの配信中に感じる高揚感


ドキドキとワクワクを、リスナーさんとも共有したい


そしたらもっともっと。楽しく感じられる、と思うんだ。



「うんうん、熱を上げでこ!テンションもね。って、こんな時にあの二人はぁああああ!!!」


不意に大声を出し、地団駄を踏む。

珍しくも眉間にシワを寄せ、怒っているのが目に見て取れた。


『大賀は携帯が壊れて遅刻、で。りとは、』


「風邪で休み、かぁ。何とかは風邪引かないってゆーよねぇ、嘘じゃんか。あのことわざ」


『りとはバカじゃないけど、うーん…大丈夫かな』


「ふむ。…あ!そだ、お見舞いにおいで。放課後にでも」





無駄にキラキラとした笑顔でそう発した佳名斗は名案でしょ!?と言いだけで、思わず笑みが溢れた。


『うん。じゃあお邪魔しよーかな』


お見舞いの品は、コンビニで何か買って行こう。


そう、内心で決め。玄関に着いたオレたちはいったん別れ、室内履きへと履き替えた。



室内履きの上に、束のように乗っている手紙はもう見慣れた光景だが、嬉しい思いは変わらない。


この手紙には活動の応援を綴った、言葉が並んでいて


読むと暖かい気持ちへと包まれるから。





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