第17話-最後の意地悪


***




小走りで、暗くなった夜道を走り。


無事に家に着いたオレは携帯で時間の確認をし、小さく息を吐く。


『…ナイス、アラーム』


うっかり時間を忘れ、話し込む所だった。


一応、セットしていたアラームが鳴り雪久さんは電話だと勘違いしてくれたお陰で、抜け出すのはそこまで難しくは無かった。が、正直な話し、




もっと話したかった。


これからの事と、雪久さんが提案してくれた“あの話し”


きっと今以上にいい風が吹く。


『…っと、その前に風呂入ろうかな』


玄関に荷物を置き、腰くらいまである靴箱の上に携帯を乗せた。靴箱の上には白色のコースターが敷かれ、コースターの上には花瓶が置かれていて、花だけが入っていない。



昔は…よく花を生けていた


というより、生けてくれる人がいて。




『元気にしてるかなぁ…茂にぃ』


もう会えない人。


連絡先も住所すらも知らない、あの人は昔語ってくれた夢を叶えられただろうか。


そう思いを馳せて、ふっと苦笑した


時折、思い出すのは今に始まった事じゃない。



だって茂にぃはオレにとって…夢に向かう姿が憧れで、目標にした人だから。


なんて、本人には言ってやらないけど。


だって口にしたら大笑いしそうだし、何より…




“すぐ迎えにくるから––––––––…”


あの約束を忘れているであろう茂にぃに対する、最後の、オレが出来る意地悪だ。




携帯のすぐ側に伏せてあった写真立てに手を伸ばし、写真立を立てる。


『オレも…オレたちで夢に向かって頑張るよ』


届かない言葉、


でも、それでいい。



オレたちが有名になって、いつか茂にぃの耳に名前が届く事を信じて。



『さて、と風呂入った後はゲームして。あとは…配信の準備しないとな』


ぐっと伸びをしながら廊下を歩く。

つい先程まで熱弁していた内容を思い出して、無意識にも口角がゆるりと上がった。


雪久さんが持ってきた例の案は、最高だが、


下準備は必要で、


どんなに最高な企画でも宣伝は必須。





早くて今日の夜には動きたい。


後は…学校での宣伝、か。





『楽しみだなぁ24時間配信!!!』

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