第14話-衝撃、予感、


「うふふふふっ。実はね、ずっと前から温めてた案があるんだけど。


ちょっと皆、––––––––––…耳貸して」




妖艶に笑む、雪久さんに皆は身体を近付ける。


緊張と期待と不安と高揚感がごちゃ混ぜになりながら、雪久さんがゆっくりとした口調で溢した言葉は


オレたち全員に衝撃を与えた。






***



今後の活動に花を咲かせ、テーブルの上にルーズリーフを広げて互いに意見を出し合っていた中、


誰かのスマホが鳴った。


バイブオンでやたら振動するそれはまるで自身の存在を主張するかのように、鳴り続け、


やっと止まったのは、


『あ…ごめん、オレのケータイだ』


ディスプレイを見た、誠だった。




「あら。電話?急用かもしれないし、出たらいいのに」



不思議そうに小首を傾げ、そう発したのは言わずもがな雪久マネージャーで。そんな彼…、いや、彼女に苦笑を浮かべた誠は軽く頭を掻き、


一度、オレたちへと視線を戻した。



「どしたー?誠っちー?」


『いや、…その、今日はもう、帰るよ』


「え?あっ、…もうこんな時間かぁ!用事あった!?」



ごめんね、遅くまで!と、手を合わせて謝ったのは佳名斗で。そんな佳名斗に慌てて誠は横へと首を振る


『うんん。最後まで付き合えなくて、ごめん』


「いや、もう遅いし気にすんな」


「もう10時かよ、早ぇな」


「オレらも、もうちょいしたらお開きにするから誠は気にしなくていーのっ!ね?」




思わず横に座っていた誠の頭を軽くなで、気にするな。と、口にすれば続いて大賀が時間を確認して、


眉を寄せた。


最後にお開きにする、と告げたのは佳名斗だが。その顔はまだ語りたいと書いてあり、


きっとまだお開きにはならないだろう。


そして、送り出されるような雰囲気になった事を察した誠は腰を上げ、



雪久マネージャーへと再度、視線を戻した。


ほんの一瞬、長い睫毛が伏せられ、影を作る。


けれどすぐ様、澄んだ瞳がマネージャーを映し、




形の良い唇が、謝罪の言葉を述べていた。


『あの…雪久さん、ごめんなさい。オレだけ先に帰らさせていただきますね。


久しぶりにお会いできて良かったです』


と。たったそれだけのセリフ。


にも、関わらずオレの、俺たちの時間を止めるのには充分過ぎる程で、




少しだけはにかんだ笑みが、


ほのかに香る洗剤の匂いが、


澄んだ瞳が、


低くもなく、高くもない中性の声が。





全てが甘く感じて、


真っ正面に座る雪久マネージャーはそれを直視できたのか、と考えてしまい。


胸の奥が少しだけ痛くなった。




『じゃ、また学校で』


その言葉はいつものメンバー全員にかけられ、鞄を肩に掛けた後、振り返る事なく急ぎ足で店を後にした

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