第11話-放課後


夢を見ていたのか、見ていなかったのか。

起きた時にはもう覚えていなかった。


ただ、オレを起こしてくれた大賀をみて安堵したのと同時に襲う、痛み。



『っつ…、首、つった』


「…今度から首にはめる枕持ってこい」 



首に手を当ててしかめっ面をするオレに、呆れ混じりの声が落とされた。


「それと今日、マネと話し合いだとよ」


『ん。了解。長くかかる感じかなー』


「? 用事でもあんの?」


夕方は極力出歩きたくないな、


なんて思いながら聞いてしまった質問に、大賀は眉を軽く寄せてオレを見る。


いや、まぁ用事…というより諸事情なだけですが。


だってほら、ね。オレ、特異体質だからさ


夜中に身体が縮むから、縮む時間帯は避けたい。




うっかり、身体が縮む瞬間を目撃!


って、スクープレベルの度を余裕で越えてしまうわけでして。間違いなく人体実験行きだ。


まぁ。ぶっちゃけた話し。


その瞬間さえ上手く誤魔化せられれば、小さな身体だろうと外出し放題。




なぜなら身体が縮んで小学生になる、なんて話し


誰も信じないからだ。うっかり話したとして、精神病院行きくらいだろうか。




『まぁ、そんなとこ。それより2人は?』


「あぁ。移動教室だとかで少し前に戻った」


『そっか、移動教室かぁ…って、うわぁああ!オレらも教室戻ろうっ、予鈴なっちゃう』



見当たらないりとと佳名斗の姿。

どうやらオレを起こす前に校内へ戻ったらしく、今は2人きり。


他人事の様に、先輩たちは大変だなぁ。と思ったのも束の間、


携帯の時間を見て、慌ててベンチから立ち上がる。




『大賀、急ごっ!』


振り返って大賀を見れば、眩しそうに目を細めてオレを見ていた。


「–––––ああ」






***


結局昨日の夜はぽてぽてさんと周回したり、限定イベしたりで報酬ザックザク。


あんなに進むなんて思ってなかったし、やっぱりぽてぽてさん無敵やなぁ。なんて思いながら、


ストーリーのクエストもちゃっかり寄生して、ガチャを回す石を無事ゲット。まれにストーリークエストに規格外なボスが鎮座していて、


倒さないと行けないところがある。


難易度で言うなら死亡率70%、ってところだろうか


そこも、ぽてぽてさんと難なくクリアし、




なにでスイッチが入ったのか、ぽてぽてさんがオールする気になり、


オレも同じくオール。


途中、眠気が襲ったものの目の前の敵の醜い容姿に睡魔という魔の手から逃れ、改めてぽてぽてさんの強さに感嘆した。


一緒にいる自分まで強くなった錯覚さえ起こす始末


ぽてぽてさんも今回のガチャを狙っているらしく、今日くらいに底まで引くと言っていたのは数時間前の話し。





そして、今オレは学校の授業を受け終わり。


いつものメンバーでチェーン店に来ていた。


シックな店でも、和のような雰囲気でもない賑やかな店内。家族連れ、恋人、友達、


時間が時間だからか大繁盛。


がやがやと賑わう話し声、

皿に当たるたびになるスプーンや、フォークの音

子供の泣き声、

店内を出る客と入ってきた客の足音。

店員の注文を繰り返して読む声、

時折聞こえる店内のBGM


香る匂いは肉が焼けたような香ばしさや、

炒めた野菜の匂い

調味料で香る醤油の匂い

そしてほのかに香る、甘い匂いはデザートからだ。




「マネまだ来ないしなんか食いながら待とっかー」


ほい、っと手渡されたメニュー表。

表は日替わりランチお勧め、と大きく書かれた文字

中にはたくさんの料理とデザート、飲み物が記されいて、


何気に見た裏側はまだ飲めないお酒が名前とともに載っていた。


「悩むなぁ。誠はどうする?」


『苺パフェで』


横に座っていたりとが手元を覗きながら、聞いてくる。


ていうか、結構ボリュームあるなぁ


丸いアイスが三つと苺がどっさり乗っているパフェ




これ食べたら夜ご飯はいらないな、うん


と、1人納得していたオレに何故か目の前に座る佳名斗、横に座っているりと、佳名斗の横でオレからみたら斜め前に座る大賀から、まさかのジト目


え、なに、なんでその反応…?


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