第8話-ログロック


つい最近やり始めたゲーム、『ログロック』

特に流行っているとか、自分の街や家を作っていくとかではなく普通のRPGゲーム


自分のアバターを指でタップすれば、指定された位置までアバターが走って動く。モンスターに遭遇するのはクエストに入ってのみ。



楽しいのは自身のアバター強化。


武器のレベルを上げれば上げるほど、強さが増す。とはいっても強化素材を集めるのに一苦労。時間限定のクエストや、時折ガチャを引いて素材強化を引き当てたり、後は難易度の高いクエスを受ける事で素材が手に入ったりする。



まぁ、空いた時間にしかゲームをしないせいか凄く強い、なんてことはなく。強さでいうなら中の下


『あっ、ガチャ入れ替えしてる…そっか今日、メンテ日だったからか』


ふむ、と顎に手を当て、ガチャのページを開くと『新武器!』と書かれていた。




おぉ、これは中々強い。


武器の説明文を読み、思わずガチャを引くための石を確認してしまった。手元にある石の数は400個。


一回のガチャにつき、石を5個使うためやや少なめ


因みに石はログインボーナスに1個、クエストにつき1個、イベントクエストはポイントと引き換えになんこでも貰えるシステム


ガチ勢は課金派が多く、オレは無課金派。



『ぁああああ…迷うな、引きたいけど石が足りない』


課金は極力避けたい。なぜなら配信で買う機材等に当てたいからだ。


バイトをしていない分、親から毎月何十万かは渡されていて、外食は控えて手料理で節約。


余った金は貯金して、活動の足しにする為、手はつけていない。




『仕方ない、クエストして石集めて、次のメンテが来るまでに間に合わせれば…いける』


イヤホンを携帯にさし、ゲームの音量を上げる。


こうする事でゲームの中に入れているような…そんな気がする。時間を忘れてゲームをする時間は結構好きだ。



ゲームだけじゃなく、集中できる何か。


読書や運動、料理やゲーム、音楽やビデオ鑑賞。


配信とは違う、時間の使い方。緊張も不安もない自由な時間。どっちも大事で手放せない。


いや、違うか。


どっちも手放したくないからこそ、オレは、オレたちは配信者に向いているのかもしれない。


ストレスが溜まっている社会人や学生、

泣きたいとき、辛いとき、

オレたちは生きる楽しさを配信で伝える。



一人でしたらつまらなかったゲーム。敢えて逆手にとり、面白おかしく配信してみたり。


歌配信ではいきたりの替え歌をしてみたり。


雑談で愚痴を引きだしてみたり。


創作ダンスや踊ってみた、で無理難題な事に挑戦したり




ぜんぶ手放せないオレたちだから、向いている仕事だと思った。


趣味も最終的には配信に繋がる部分があって、


最後はそれがリスナーの笑顔に繋がればいいな、なんて思ってしまう。



『って、この敵強いな!?』


思わず上げた声は見事に裏返り、苦戦するアバター


半分くらいまで自分のHPが削られている。


『やらかした、せめて…ぽてぽてさんが居てくれたらなぁ』



はぁ、っと息を溢し、ダメ元でゲーム仲間であるぽてぽてさんがログインしているか確認するものの、


案の定、ログインはされていなかった


それもその筈、既に夜中の3時を回っているのだから




『はぁ、…周回して石貯めるかぁ』


肩を落としつつも、一人で出来そうなクエストに入り周回をする。同じ所をなんども周り、同じモンスターを倒すだけ。とは言っても難易度は低いものから高いものまで様々。


ぽてぽてさんが居てくれれば、ちょっと難易度の高いイベントクエストを難無くクリア出来るだろう


というか瞬殺だ。


ぽてぽてさんが得意とするジョブ、つまり役職はヴァルキリー。相手と自身のHPを最大限まで上げ、尚かつ、攻撃力すら上げてくれる。


もう無敵。最恐で最強だ。



ぽてぽてさんと知り合ったのはいつだったか、覚えてはいないがプライベートとゲームに線引きが出来る人で、安心できる人。


実際、女か男かも知らない。


もちろん、相手にもオレの性別は教えていないのだが



まぁ、アバターがお互いに男キャラだし男なんだろうな。くらいの認識。

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