第102話 白銀のゴーレム。

 コンテナの扉を開くと妖怪の里で天狗が憑依したあのゴーレムが格納されていた。

 天狗八仙それぞれの特性に合わせた姿と能力を持っている。


「さてさっさとたるわよ〜」

「花ちゃん!天狗を呼んで頂戴」


 あの妖怪の里以来、妖怪花子さんはエミリアの助手の様になっている。


 居並ぶ天狗八仙にエミリアが告げる。

「やり方同じだから準備して頂戴ね〜」


 花子さんは天狗八仙から髪の毛?体毛?を一本ずつ受け取る、

「エミリアさんお願いします!」とエミリアが呼ばれる。


 日傘を〈クルクル〉回しながらエミリアがやって来る。

「君らゴーレムの扱いが粗雑よ、あれから修理大変だったんだから」

「さてこの改良の凄さを見てもらおうかね〜」


 ボディーが銀色の金属製になっている。

 光沢だろうか時折<ピカピカ>と虹色の光が流れる。


 超希少な魔力を秘めた金属ミスリル製だ。


 天狗八仙に似せた造形なのでどれが自分のゴーレムなのか一目で分かる。

 天狗八仙たちは気が進まない雰囲気でゴーレムの側に立つ。


 エミリアは花子さんから天狗たちの毛を受け取るとゴーレムに命令する。

「ゴーレム!お座り、伏せ、お尻あげて!」


 ゴーレムがお尻だけをもっこりと突き出すと、

 なんとゼンマイ仕掛けの人形の様なネジが飛び出している。

 エミリアの指示でトイレの花子さんがネジを左回りに3回程回すと〈ポーン〉と

 ネジが抜ける。

 エミリアが抜けた空洞に毛を一本入れる。

 トイレの花子さんがネジを締める。

 8体分に髪の毛を入れ終わるとエミリアが叫ぶ。


「フュージョ〜ン〜ッ」


 〈ブン、ブブブン、ボワッボゴッ、ブンブンブン〉

 ゴーレムのお尻が唸り出す。

 〈ブリブリブリリリ〜〉

 何とも下品。


「さて準備完了」

「憑依の仕方覚えてるわよね」

「自分の髪の毛と会話する様に集中して!」


「鞍馬山僧正坊、比良山次郎坊、飯綱三郎、彦山豊前坊、出ませい出陣じゃー」


 大天狗こと愛宕山太郎坊、集中!

 ゴーレムの一体の背中に巨大な紅蓮の扇が現れる。

 その扇はユラユラと燃えている。


 鞍馬山僧正坊、集中!

 ゴーレムの一体が一回り小さくなり、一本歯下駄を履いた見るから俊敏そうな姿に変幻する。

 腰に二刀の刀を刀を差している。


 比良山次郎坊、集中!

 ゴーレムが緑色の木の葉で覆われる。

 風も無いのにその木の葉はユラユラと揺れている。


 飯綱三郎、集中!

 ゴーレムの両肩に管筒が一本ずつ現れる。

 その管筒の口は〈パチパチ〉とスパークしている。


 彦山豊前坊、集中!

 ゴーレムの頭に丸い虚無僧の笠が現れそこから袈裟頭巾が垂れ、顔を覆い隠す。

 周辺の空気が渦巻いている。


 相模大山伯耆坊、集中!

 大きな二輪の輪っかが胸の位置でクロスして体を跨いで<クルクル>と回転している。

 足下の小さな瓦礫が浮き上がって浮遊している。


 大峯前鬼坊、集中!

 剛力・無双の剛力棒を手に持つ極めてシンプルな姿。

 剛力棒からの圧で空気がへしゃげる。


 白峰相模坊、集中!

 真白な体に凍てつく冷気で周辺の空気の水分が凍って<キラキラ>と輝く。

 足下は薄氷が広がり氷の絨毯となる。


 彦山豊前坊、集中!

 黒い闇の様な色の体にブラックホールの様な尋常では無い凝縮を感じる。

 極め付けはその頭上に浮かぶ巨岩。

 異様だ。


 そして9番目のゴーレムの登場となる。


 そのゴーレムはまるで白無垢の天使の様に白い翼で身を包くるみ。

 静かに起立している。

 その横わらに白鴉のハクア姫が立つ。


 これが私の写身なのね。


 ハクアは集中する。


 そしてイメージが湧き上がる。

 それは真っ青な大空に大きな白い翼を広げて羽ばたく天使。

 妖組の鴉の姫だがそのイメージは天使。


 ゴーレムが白無垢の翼をゆっくりと左右に開く。

 現れたその面おもては美少女。

 瞳が開と<バサリ>と羽ばたき音がしたと同時にもうそこには居ない。

 天高く上空に翼のひと羽ばたきでそこまで飛翔。


 他の8体が鳴動する。


 歓喜の鳴動。


 純白無垢の白き鴉姫ここに降臨。

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