第101話 やって参りましたが早く帰りたい。

 流れる調べは哀愁漂う“ふるさと”。

 日本人であれば実体験がなくとも自然に涙ぐむ血が覚えている奇跡の調べ。


「私は令和現代の日本人は嫌いだが昭和、それ以前の日本人は大好きさ、情緒がある、儚さを知覚してその短さの中で大小様々な花をちゃんと咲かし散る」

「切なく偉大で愛おしい人々」

「私のコレクションに日本人が多いのは綺羅星が沢山またたくからだろうね」


「ほら東の空に現れたよ」


 2000メータは超える超高高度に富嶽ふがくが現れる。


 爆撃機のボディーは迷彩色で塗装されているが一際ひときわ目立つ塗装があり接角のカモフラージュが台無しとなっている。

 それは両主翼のど真ん中に真っ赤に塗装されている日の丸。

 艶あでやかすぎて分かり易い目印となっている。

 ただただ艶やかで神々しくもある。


 その巨大さは海の大和、武蔵、長門に並ぶ空の大和の位置づけとなる。

 幻の日本人の叡智結晶。


 下腹部の格納ハッチが左右に開く。

 ゴーレムが格納されている。

 ゴーレムのコンテナを固定しているアジャスターが外れる。

 ゴーレム8体が一括して固定コンテナの筐体共々投下される。

 数が違った9体だ。


 天狗が築いた城壁の内側の落下目標には緑色の狼煙のろしが上がっている。

 その狼煙の場所にはエミリア・アルケミーオがクルクルと小さな白いパラソルを回しながら立っている。

「こんな殺戮の場にか弱き少女を来させるなんてどう言う事、もう!」


 エミリアには事の始まりとなった『なにわ』でのスイーツ事件のペナルティがある。

 自分の興味が湧かない事には頑として非協力的なエミリアも今回は嫌だと流石に言えなかった。


 <キューーン>

 <ドガーン>

 とゴーレムのコンテナが地面に届く。


「さてさてお仕事済ませて早く帰ろ」

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