第100話 ちるな蹂躙す。

 そこはケルト神話の戦場を彷彿させる事となる。

 僕にちるなが一礼してゆっくりとインスマウス獣人の中に歩んで行く。

 ちるなは後ろ髪を束ねた和紙を<ぷつん>と指先で切る。

 その表情は僕からは見えない。

 その表情は清廉な白拍子のそれとは真逆の残忍な戦の女神の慈悲なき冷徹な笑みで覆われる。

 腕を胸元に交差させてゆっくりと左右に開く。

 その瞬間、一羽の大鴉オオガラスモリガンと化す。


 戦場を司る戦女神モリガン。

 この地はケルト神話の戦場の洗礼を受ける事になる。


 大鴉はインスマウス獣人が密集している丘に舞い降りる。

 丘に戦女神が降り立つ。

 黒きマントを翻ひるがえし真っ赤なドレスを着た戦女神モリガン降臨。


 <ヒヒーン>何処からともなく一本足の巨馬に曳かれた戦車が駆けてくる。

 ひらりと飛び乗ったモリガンは戦車に立て掛けて備え付けられている武器の中から大鎌を取り真横に構える。

 一本足の巨馬は助走などなくいきなりトップスピードで駆け出す。

「ヒハハハハハハ」と大鎌を横薙ぎに一閃。

 インスマンス獣人の首が<パシュッパシュッ>と飛び散る。

 戦車の後には真っ赤な血の海とゴロゴロと転がる首、首、クビイイイイ。

「ヒハハハアハハ」

「戦場には血じゃて血、まだまだ足りぬ」

「我、愛するお方様の行手を汚すとは万死に値する」

「血の海に沈みや」


 狂気、殺戮、地獄絵図。

 空気が生臭い血の匂いで染まる。


 左サイドはちるな一人で壊滅する。


 右サイドの妖の仙人と左サイド戦女神の圧倒的な殺戮でこれ迄の戦場の風景が一変した。


 小太郎の窮地も小さく掠かすれてしまう。

 女暗殺者達は警戒をしつつももう寛いだ感じで小太郎を囲んでいる。


 まだこの真田丸型の砦の真正面から迫るものが居るのを忘れてはならない。

 サイだ!

 重戦車の如き鎧を纏って一直線に駆けてくる。


 ギヒノム卿が3個目のオルゴールを開く。

 その音色は…。

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