第98話 美しき女暗殺者たちお疲れ様。

「もうそろそろよろしい様ですね」

「彼女らも満足でしょう」

「次弾を投入としましょうか」


 ギヒノム卿が僕を仰ぎ見る。


 太極拳を極めし暗殺者は顔に垂らす布までもボロボロとなりその内の顔もほぼ見える。

 皆んな妖艶な切れ長の眼差しを持つ絶世のチャイニーズ美女だ。

 全て女性。

 それには必然の理がある。

 生命力と柔軟性。

 極めるためには可能な限りの寿命の長さと太極拳の柔を元々持ち修行のスタート時点でのポテンシャルが高い位置からが極地へのとうたつの可能性が高い。

 天賦の際があるとも可能性を高めねば成し得ない極み。

 それを得た暗殺拳の珠玉の美が嬉々として舞うその殺人の舞はそのまま放置すれば擦り切れ消え去るだろう。


 天賦の才はその特異点故に永続は願わずに一瞬の届くべき高み、高みにさえ触れれば存在の理由に美徳を添える事で満足なのだ。

 己の眼前にしか見えない極地の先はまた己の眼まなこでしか見極められない。


 ギヒノム卿がポケットよりオルゴールを取り出す。


 今度のオルゴールは西欧の城を形取った蓋をしている。

「十字軍の意志を受け継ぎし正義の騎士団よ出でよ!」

 蓋を開けると流れ出した音色はくるみ割り人形。

 軽快な行進曲が流れ出すと、瓦礫の壁にゴシック調の城門が現れ門が開く。

 身長1m70㎝、80㎝クラスの西洋鎧を着た兵士が規則正しく整然と隊列を組んで出てくる。

 兵士は色んな兵種が混じっている。

 軽装の兵士、例の十字の眼穴の兜を付けた重武装な兵士、背に強弓を背負った兵士と色々。

 ただその兵士の肌には木目の模様が見える。

 そうあの時の人形の兵士だ。

 無表情の人形の軍団。

「鉄壁進軍!」

 重武装の兵士が前衛盾となり太極拳の暗殺者の前に割って入りインスマウス獣人の前に立ちはだかる。

「正義の斬撃!」

 前衛がインスマウス獣人を推し戻す壁となりその勢いの引きのタイミングで軽装の兵士が斬りかかる。

「強弓支援!」

 後方ギヒノム卿の前に強弓の兵が陣取り軽装兵士の先に矢の雨を降らす。


 太極拳の女暗殺者達は小太郎の周りの円陣は崩さず身繕いをしている。

 円陣を小さき紅袋が飛び交う。

 流石は女性。

 身繕いの締め括りは真っ赤な紅をさす。


 僕も新たな仲間を召喚しよう。

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