第95話 お天道様。

 瓦礫の小山の上に中日ドラゴンズの野球帽を被った少年がちょこんと立っている。


 今まさにインスマウス獣人に一斉に襲われそうな瞬間。

 耳元の声の方向に視線が流れた小太郎が瞳に捉えたのはその少年だった。

「何故にお方様、危険です!」

「お戻り下さい」


 小太郎は忍びにあるまじき大声で叫んでいた。


 僕は距離があるので聞こえないかも知れないけど小太郎に向かって話す。

「独りで背負う正義は良くない。小太郎が討死したらそれを追う追従者が多く出て

 結局は皆んなの安全を脅かす事になるんだよ」

「殿しんがりは脱出生還が条件だった筈、約束反故は厳罰だからね」


 人は他人の目がなくなると二通りの行動をする。

 一つはサボりまくる、公然の面前では偽善者を装う悍おぞましき畜生。

 もう一つは周りの目があろうがあるまいとやるべき事を全うするお天道様の申し子。

 お天道様の申し子に強い正義心が重なると起こす行動は非常に分かり易い。

 僕の仲間は全てそう!

 だから一人として失う事は絶対に出来ない。

 お天道様の申し子なんて令和現代の世界だと万人に一人ぐらいしか居ないだろう。

 言うならば絶滅危惧種。

 誰かの為に心を震わせ行動する者達。

 色々な世界、時間からこのダークツインに転じて来た者らに転じる元となった哀しみを

 二度と味合わせる事が起きない桃源郷を作る。

 そこに小太郎は居てくれなきゃ困る。


 お天道様の申し子は全力で守る。


 僕は非力な小学生だけど覚醒した力を纏っている今は守る力は百万馬力。

 覚醒時間が長くなる程に蒼白い黄泉の炎の中の漆黒の点、闇の心も徐々に目覚めて来る。

 それがもう楽しみ始めている。

 更にもう直ぐ令和現代の夜明けが近く、タイムリミットも迫っている。


 ガンガン行かせて貰おうかね。

 ではと、「出でよ、地獄の執政官 夢魔公爵ギヒノム卿」

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