第88話 風魔忍法 風魔唐獅子
みんなの視線が異空間ゲートに入るように促す。
僕は入る。
その後に葛籠を担いだ下忍。
αナタク、βクー・フーリンと続く。
小太郎が殿しんがりすると目でエインセルに伝えるとエインセルは頷き自身が蒼い奈落の渦に入り異空間ゲートは閉じる。
小太郎は殿しんがりの準備を黙々と行っている。
腰のショルダーから風魔唐獅子を5体取り出し設置する。
5センチ程の小さな唐獅子の人形を5メータ間隔を開けて設置する。
風魔唐獅子は風魔カラクリ秘中の秘である。
小さな唐獅子の中には風魔一族の魂こんが封入されている生きた唐獅子人形となる。
唐獅子人形は丁度獅子舞の獅子、沖縄のシーサ、神社の狛犬の容姿をしている。
唐獅子人形に封入されている魂の大きさでこれより塵、土を結晶させて生成される巨大唐獅子の大きさ能力が決まる。
崩壊したスイーツ村の奥から新たなインスマウス人が途切れる事なく<ヨロヨロ>と押し寄せて来る。
その少し後方に淀んだ霧の壁がある。
まるで巨大なスクリーンのような霧の中に巨大な何かの影が映し出される。
上ばかりに見惚れていると足元に<シュルシュル>と触手のような蔦つたがインスマウス人の足元に這い回る。
小太郎は痺れ煙幕を投げ先頭のインスマウス人を硬直させる。
すると足元の触手が硬直して動けなくなったインスマウス人を触手の突端パカリと割れさ大きな口に変幻させなりインスマウス人を丸呑みする。
<ギュロギュロ>とインスマウス人の声だけが後を引く。
まるで餌だ。
ただの餌。。。
小太郎は、風魔唐獅子に「頼むわね」と頭を撫でる。
設置された風魔唐獅子の地面が迫り上がり地面が隆起して五メートルはある岩の唐獅子が姿を現す。
もう、小太郎の姿は其所そこにはない。
岩の唐獅子は後ろ脚にお尻を思いっきり乗せて弓を弾くように勢い付けて一直線に蔦の本体に向かって駆け出す。
ヨロヨロと数多あまたのインスマウス人が、踏み潰され気色の悪い<ヌメヌメ>とした体液を飛び散らす。
五匹の唐獅子が同時に飛び掛かる。
<ガゴーン>と霧の中に隠れるモノに激突する。
その衝撃で霧が霧散する。
霧が晴れて現れたのは巨大なイソギンチャクの化け物。
激突の痕あとは蔦が飛び散り<ヌラヌラ>した体液が滝のように垂れ流れ出ている。
何処ともなく至る所から「ダゴン、ダゴン」と唱和する声が響き渡る。
インスマウス人が虚ろな瞼無しの瞳を<キュロキュロ>しながらイソギンチャクの化け物に向って歩き出す。
化け物はイソギンチャクの体の至る所に開いた口でインスマウス人を<ボリボリ>と食い散らかす。
食べるほどにイソギンチャクの傷が治癒し新たな触手が生まれる。
「ダーゴン、ダーゴン」とインスマウス人の唱和は激しくなる。
インスマウス人は生きながら食べられている。
「ダーゴン」と最後のインスマウス人が呟きながら喰われ終わると…。
イソギンチャクの化け物は、二倍近い十メートルにはなる巨体へと変異していた。
その巨大化したイソギンチャクの裾野の内側には五体の唐獅子がイソギンチャクの円周に沿って横たわっている。
唐獅子の頭頂部に座る風魔唐獅子が喋った。
「朧姫様〜お健やかに!おさらばで御座る」
「朧姫〜大人しゅうですぞ。それでは」
「朧姫様〜ハハハ、ハ」
「朧姫様〜皆をよしなに!おさらば!」
「楽しゅう御座った!おさらばで御座る」
みんな、小太郎を魂となって見守って来たご先祖様にあたる。
各々呟くと<ピカッ>と閃光と共に大爆炎が渦巻く。
ダーゴンと呼ばれしイソギンチャクの化け物は五カ所に内側より爆傷を負い前進を止め後退し始めた。
赤い満月の中、『なにわ』をひた走る怪しき陰一つ。
その瞳には、一筋の涙が筋を引く。。
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