第5章 外の世界へ

第83話 港湾都市『なにわ』潜入

 さあ外の世界へ。

 

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 満月の夜、『なにわ』をひた走る怪しき影一つ。

『なにわ』の街並みは迷路の様に入り組んでいる。

 幾重にも張り巡らされた見上げるほどの高さの塀の下を疾走する。

 その影は月明かりで出来た塀の影に染まり誰にも見えない漆黒に溶け込ん

 いる。

「忍びの明暗は常人とは別なのさ。闇に紛れるなら明が一番強い時を選ぶのさ」


 塀の終わりでふわりと物陰から影が夜空に舞い飛び黄色い満月の中に一瞬その

 漆黒が躍り浮かび消える。

 漆黒の影は街路樹の中に飛び込む。

 〈カサカサッ〉と木が揺れる。

「首尾は如何でしょうか?」

 と漆黒の影の呟きと共に〈すーっ〉ともう一つの影が現れる。


 月が雲間から顔を出し月光で影を足元から徐々に照らし出し、少しずつ人とし

 てのシルエットを顕わに晒す。

 漆黒のローヒールブーツ、

 ブーツより長めの紫紺のタイツ、

 ミニのレザーのタイトスカート、

 タイツとスカートの間の透き通る白い肌が輝く、

 レザーのタイトのお尻は丸みを帯び女性である事を物語る。


 漆黒に光沢を抑えられたバックルに留められたベルト、

 ベルト脇にはクナイと大小様々なレザーのポーチ、

 漆黒に染められた忍び装束、

 内側には紫紺色にコーティングされた鎖帷子、

 背中には斜め掛けにされた忍者刀、

 首回りには紫紺のスカーフ、

 スカーフの隙間から透き通る白い肌、

 顔はフルフェースの狐顔のマスク、

 耳には縦長の棒状のイヤリング、

 頭は紫紺の流線型のヘッドギア。


 月は漆黒の完全武装の女忍者のシルエットを一瞬炙り出して雲間に隠れる。


 周りは漆黒の女忍者よりも深い深淵の闇が広がる。

 深淵の闇より返事が返る。


「全員揃ったな!」

 #クククと、深淵の闇自体が嗤う。。。


 僕らが立つのは正方形の街並みである『なにわ』を四分割する東ブロック

 の中央に位置する何の変哲も無い公園の端の街路樹。

 眼前に広がる公園の反対側は、眩い光に包まれた美味しいスイーツのお店

 が建ち並ぶエリア。


 ※ここに至る経緯は、5時間前のシャングリ・ラの地下にある円卓の情景の

 回想となる。

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