第54話 僕は嬉しい!

 シャングリ・ラの護りは彼らに任せていた。

 幻術士 果心居士の幻術で視覚的な隠蔽カモフラージュ。

 忍者 風魔小太郎は広域に警戒網を張り巡らせているセンサー。

 ドルイドマスター 森羅万象はこの原野の森羅万象に守りの為の罠を張り巡らせるトラップ。

 楠木正虎は森羅万象が作り出した5000体のゴーレムを警備兵として戦略的な配置を行うソルジャ。


 彼らの布陣は良く機能していた。


 高高度からのゴーレムという大型兵団の強襲に良く耐えた。


 ただ結果は惨敗。


 地下回廊への入り口に辿り着かれたらそれでシャングリ・ラは終わる。

 よくよく失敗要因を省みて万全の上の上を目指すのでは無く構築してもらわないといけない。


 そうしないと僕は安心して夢から覚めて現代側で日中を過ごせない。

 現代側で日中を過ごすということは何も施策を施さなければシャングリ・ラは無防備で荒唐無稽で何が潜むか分からない世界に丸裸で放置される事になる。

 そして大事な仲間達が不慮の厄災に巻き込まれる事になる。


 今回の演習で護りを担った彼らも痛感しただろう。

 そしてその粗を自身で考え改善して貰わねばならない。

 何度となく想定を超える脅威が襲い来る筈、その都度凌いだ先には更に強固に強固に自力で改善を進める事を進めてもらう土壌が不可欠。


 さてとその機運はどうだろうか。


 小豆公望の戦局羅針盤の能力で碁盤の目の駒を動かすが如く兵を縦横に配置転換し電撃的に勝利を勝ち取ったがこれを特殊能力だったからと思考を止めているならその先は無い。


 前方後円墳を取り囲む天狗、鬼、木偶の坊ゴーレムは憑依を終わらせてただの動かぬ石像として立ち尽くしている。


 今その実体となる妖怪らもシャングリ・ラを目指して移動中。


 その石像の傍らに彼らは居た。


 果心居士が口火を切る。

「まー見よ!わしの勝ちじゃて」

 〈ふふふふふふ〉

 その含み笑いの中で石像と化したゴーレムが囲んでいる前方後円墳の姿が揺らぎ始める。

 そして搔き消える。

 そしてただの空間。

 いやその地は小さな湖となる。

 シャングリ・ラ平原の中心を囲む様に4つの湖がある。


 もし憑依中のゴーレムが地下回廊目指して前方後円墳に突進したならば全て水中に没する事となっただろう。

 幻術は幻術の中でその術は成就する。

「わしを誰ぞと思うかや」

 〈ふふふふふふふ〉

「だが幻術の大仕掛けまで辿り着かれるとはまだまだ術の精度が低かったわい、ちと考えねばの」


 次に旋風の様に〈フッ〉と現れた小太郎。

 その澄ました容貌が少し悔しがる様相をしている。

「私の出番が無かった!」

 広域で警戒網を張っていたがまさかの超高空からの襲撃とは…。

「出番が無いではないか!口惜しい!」

 高高度への監視を工夫しないと出番が無い…。


 森羅万象は呟く。

「素晴らしい、この地の龍脈の息吹は森羅を超進化させる」

「大蔦は大蔦はエメラルドドラゴンに超進化した」

「森羅万象の極み」


 楠木正虎は小豆公望に戦略の師事を願い出る。


 僕は安心して夢から覚めることが出来そうだ。

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