第52話 天狗ゴーレム。
鞍馬ゴーレムは義経の橋渡りのように軽やかに身を踊らせながら壁面を下る。
飯綱ゴーレムが両肩の管筒から管狐を放ち雷の線路を管狐の牽引で下る。
比良山ゴーレムは体から木の葉を吹き出しこの葉の絨毯を滑空する。
彦山ゴーレムは空気の渦巻きを纏い竜巻の様に渦巻きながら降下する。
大天狗こと愛宕山ゴーレムは背中の巨大な紅蓮の扇を抜き放ち紅蓮の扇で豪熱の炎を壁面に叩きつけドロドロに溶かし溶岩流の流れを下る。
妖怪の里村以来の登場だ。
先程のヒンデンブルグ号から降下した木偶人形のゴーレムとはちょいと違う。
天狗八仙が憑依したゴーレムは鈍重で遅効性の判断が専らのゴーレムの概念を吹き飛ばす。
ゴーレムの固定概念は誰かがもしくはそう定義付けられていたというだけの通り一辺倒の考えでありそれを唯一の様に扱う者らはその場で足踏しているだけで終わる。
雷速、風速、溶岩の濁流。
そのスピードは矢の如き怒濤の速さでシャングリ・ラ高原の端に到達する。
数十メータ級の緑の城壁と化す樹海の壁に天狗八仙のゴーレムが居並ぶ。
さてと踏み出す前に後ろから制される。
いや待て待て力任せは我等に先陣させよ。
強引な力自慢の鬼ゴーレムも富嶽ふがくの腹部ハッチから降下していた。
真っ赤な赤鬼、酒呑ゴーレムが無尽蔵の体力で暴れ始める。
朱雀ゴーレムが宙を滑空しながら棒術を繰り出し蔦を切り裂く。
牛鬼ゴーレムはその巨体で巨木を踏み潰す。
髪鬼ゴーレムは鋼の髪を四方に振り回しながら蔦や枝を寸断する。
伊吹丸ゴーレムは紅蓮の炎を纏わせた太刀でボロボロになった巨木を焼き払う。
鬼と天狗のゴーレムはヒンデンブルグ号から降下して緑に取り込まれたゴーレムの場所まで到達する。
蔦の眉は焼き払われて木偶の坊と揶揄されたゴーレムを解放する。
自由となった木偶の坊ゴーレムは樹木を粉砕し始める。
「僕のゴーレムは上出来だろ!ヒィヒヒ」
とギヒノム卿の隣にいつの間にかエミリア・アルケオーネがクルクルと日傘を回しながら足をトントンしている。
「樹海の障壁はこのまま排除が進みます、さて次は何が出て来るか」
その隣に小豆公望が戦局羅針盤の碁盤の目の地図を片手に戦局を見守る。
ギヒノム卿の周りが賑やかになって来た。
突き進むゴーレムの後方は無残に切り崩された切り株が延々と続く。
炎、電撃の通った後は炭となり煙が上がっている。
入り口の劔山脈の壁面は遠くもう見えない位にシャングリ・ラ高原の中に入り込んでいた。
ゴーレム達は疲れる事なくドンドン突き進む。
後方の切り株の下には新たな芽吹きが現れている。
シャングリ・ラ高原の生命力に満ちた環境故かもう次の世代が育ち始めている。
という悠長な話ではない。
切り株の根本をよくよく見ると竹藪の根が張り巡らせる様に網の目の様に蔦が入り組んでいる。
その隙間から巨大な大木が立つておりそれが今は切り株状態。
この根本の蔦の網目は青々と生命力に溢れて何らダメージも受けていない。
その網目はゴーレムが先に進む程太く発育し始める。
突き進むゴーレムの足が止まる。
目の前に巨大な岩石の塊が現れる。
ゴーレム達が飛び下がる。
岩石が鳴動し幾つもの眼が開く。
岩石はゴーレムの塊だった。
〈ゴロリ、ゴロリ〉と岩山からゴーレムが剥がれ落ち、天狗と鬼と木偶の坊ゴーレムに襲い掛かってくる。
襲い掛かるゴーレムは斬り結ぶと〈ザラザラ〉と砂粒を撒き散らして砕け散る。
足元に砂が堆積して行く。
岩山から剥がれ出てくるゴーレムは徐々に後退し始める。
砂粒のゴーレムに恐れる必要なしと〈ドンドン〉先を競って天狗、鬼、木偶の坊ゴーレムは突き進み始める。
切り崩されるゴーレムの砂は突き進むゴーレムの左右に雪掻きのように掻き捨てられていつの間にか天狗、鬼、木偶の坊ゴーレムは一体毎に砂の壁で仕切られている。
突き進む事に集中して前方砂ゴーレム、左右砂の壁、そして後方は!
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