第51話 真打登場か。

「兎追いし彼の山〜」

 流れる調べは哀愁漂う“ふるさと”。

 日本人であれば実体験がなくとも自然に涙ぐむ血が覚えている奇跡の調べ。


 そして上空にそれは現れる。

 劔山脈の中腹に居るギヒノム卿から上空数千メータは上空の高高度。

 2000メータは超える超高高度に富嶽フガクは現れる。


 富嶽ふがくのあまりの大きさに直ぐそこに飛行しているかの様に見える。


 大東亜戦争の末期に日本人の技術の粋を集め開発された秘密兵器超巨大爆撃機富嶽フガク

 日本本土から飛び立ちアメリカ本土を直接爆撃出来る朝航続距離を実現した爆撃機が世界で初めて開発された。

 航続距離もさることながらその巨大さは海の大和、武蔵、長門に並ぶ空の大和の位置づけとなる。

 終戦のその時富嶽はアメリカ本土を目前に飛行していた。

 玉音に背く事は出来ず本土空襲を諦め北アメリカを飛び越え遥か彼方へと飛び去り姿を消した。

 幻の日本人の叡智。


 余りにも巨大で遠近感が狂ってしまう。

 富嶽は劔山脈の切れ目、シャングリ・ラとの境界線に差し掛かると下腹部の格納ハッチを左右に開いた。

 格納されていたのはまたまたゴーレムだった。


 ゴーレムを固定しているアジャスターが外れる。

 順次送り出されるゴーレムは超巨大飛行船ヒンデンブルグ号のゴーレムとは違い其々に様々な固有の形をしている。

 しかも投下されると自律的に動き出して劔山脈の壁面に足を突きそわせて滑空し始める。

 その滑空方法も様々で刺のある蔦を〈バンバン〉と打ち付け、それを階段として駆け下りるゴーレム。

 超高温の火球を吹きかけ岩肌を溶かしてその溶岩流を滑るゴーレム。

 狐の様な飛翔体に引かれてソリの様に滑空するゴーレム。

 そうこの連中はあの連中だ!

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