第46話 古の伝承再び

 雲霞が目前に迫る凶暴な劔山脈の中腹にシャングリ・ラへの唯一の入り口の洞窟が開いている。

 その強風が吹き荒む入口にある絶壁の壁に沿う道幅50センチ程の道に僕らは立っている。


 あまりにも巨大過ぎて全体が見渡せない天の鳥船あまのとりふねから龍騎と呼ばれる小型の乗り物で鈴之助もこちらに渡って来て今は僕の横に居る。

 鈴之助の思念は円盤群に共有される様で待機と指示を受けて数千の円盤群が上空に浮遊している。

 僕の思念も鈴之助は受信出来る様で僕の考えが説明の必要なく鈴之助に伝わる。

 シャングリ・ラの地下に大回廊を掘りその回廊を整備して地下都市を作る。

 地下都市の企画構想と各部屋の仕様と内装工事は秘密基地という能力を持つもう一人の僕に任せる。


 この世界は精神と物理の二つの方路で訪れる事が出来る。

 物理の行使、エンペラー星人の大船団は高度な超科学力を駆使して光の速さで宇宙を航行してここまでやって来た。

 精神の行使、僕が編み出し手に入れている夢の世界を使った転移方法。

 今判明している手段はこの二つ。


 鈴之助とやりたい事が共有できたので鈴之助に実行して貰おう。

 超科学の力を見せて貰おう。


 鈴之助が量子電子頭脳 “ピタゴラス” 行動開始の指令を出す。


 〈キーンキーン〉

 《コレヨリ アマノトリフネ ハ インペイ テンイ ニ ハイル》

 《コレヨリ アマノトリフネ ハ インペイ テンイ ニ ハイル》

 《カクカン テンイ ショウゲキハ ニ チュウイ セヨ》

 《カクカン テンイ ショウゲキハ ニ チュウイ セヨ》


 空中に待機していた大小様々な円盤群が天の鳥船から距離を開け衝撃防御バリアを張る。

 僕らは鈴之助と一緒に天の鳥船に搭乗する。


 天の鳥船の中央制御室は銀色のコスチュームのエンペラー星人のクルーが行き交う巨大な空間だった。

 司令官席は全体を見渡せる塔の上にありその塔の上に僕らも居た。

 巨大空間の前面全体に外の様子が投影される。


 《テンイ カイシ》

 《テンイ カイシ》


 天の鳥船のメイン頭脳でもあるピタゴラスがアナウンスする。


 僕らはシートベルトも何もせずに普通に立ったままで転移に入る事になる。

 〈ブワン〉と頭を背後に惹かれる様な感覚が過ぎる。


 《テンイ カンリョウ》

 《テンイ カンリョウ》


 《テンイ カンリョウ》


 ピタゴラスのアナウンスで転移が無事完了した事を知る。


 巨大スクリーンを見ると空中に待機していた円盤群が大きい順番に転移を始める。

 転移の瞬間は瞬く様に一瞬発光して忽然と消え去る。


 天の鳥船が転移した深さは5千Km。

 転移なので地底5千Kmに途中の土壌を掘り進む事なくその座標に移動した形となる。

 押し出された土砂は地上に押し上げられて巨大な小山となる。

 その形はあの西都古墳群と同じ巨大な前方後円墳。

 続いて転移する円盤群も大きい順に地底深く転移しその円盤と等しい大きさで地表に前方後円墳を出現させる。

 天の鳥船を中心に古墳が取り囲む。

 外側に向かう程小さな古墳となる。


 全ての円盤の姿が消え去るまでの時間は10分も掛かっていない。


 円盤が消えた後の地表には規則正しく円状に前方後円墳型古墳群が居並ぶ壮大な風景が出来上がった。

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