第45話 惑星 ダークツイン

 太陽の裏側。

 地球からは絶対に見えない世界。

 数多の観測衛星が太陽観測の名目で送り込まれた。

 建前は太陽観測。

 その実は太陽の裏側の探索。

 太陽の裏側は古来よりの最たる未知。

 

〜○〜


 地底回廊はシャングリ・ラの高エネルギーが湧き出る地脈の影響で地質も生命力、霊力が破格に高いため掘り進むにしてもそのエネルギーを上回る道具が必要と思われる。

 ちるなは対策を立てているのだろうか。

 それを聞く前にちるなが進言してきた。

 流石だね。

 課題報告と対で対策を説明してくれる。


「本日の13時に掘削を解決する術が到着します」

「12時のお昼ご飯を食べられたらエインセルの亜空間に皆さま退避をお願いします」

「掘削に関しては数分で完了します」

「尊きお方様と犬千代丸様と小太郎殿は私と一緒に劔山脈のシャングリ・ラ入口の高台にて状況視察をお願い致します」

「現在9時過ぎです、各々準備方を進めて下さい。正虎様、ゴーレムの配備は掘削完了後に着手願います」

「では手筈通りに!」



 場面は宇宙空間。

 月の裏側。

 月の裏側の方が星屑の光が多い。

 いやこの多さは異常。

 宇宙空間の暗闇が幾万もの瞬きに埋め尽くされ光の大河と化している。

 それは数万もの大小様々な宇宙船の大艦隊だった。

 大艦隊の真ん中に超巨大な光があった。

 超時空要塞天鳥船あまのとりふねだ。


 超量子電子頭脳 “ピタゴラス” の音声が全艦隊に響き渡る。


 《コレヨリ ワクセイ ダークツイン 二 ムカウ》

 《コレヨリ ワクセイ ダークツイン 二 ムカウ》


 《キョリ 1オク4960マンキロメートル タイヨウのウラガワ ヲ メザス》

 《キョリ 1オク4960マンキロメートル タイヨウのウラガワ ヲ メザス》


 《カクカン コウソクコウコウ ジュンビ》

 《カクカン コウソクコウコウ ジュンビ》


 《1ジカンゴ二 コウソクコウコウ カイシ》

 《1ジカンゴ二 コウソクコウコウ カイシ》


 《コウソクカンザン 0.00001581コウネン ショヨウジカン 8フン19ビョウ》

 《コウソクカンザン 0.00001581コウネン ショヨウジカン 8フン19ビョウ》


 《コウソクコウコウ ノ ダセイヲイカシ タイヨウ インリョクケン ヲ ツキヤブリ ダークツイン二 トウタツ スル》

 《コウソクコウコウ ノ ダセイヲイカシ タイヨウ インリョクケン ヲ ツキヤブリ ダークツイン二 トウタツ スル》


 《ワクセイ ダークツイン チャクリクテン シャングリ・ラ》

 《ワクセイ ダークツイン チャクリクテン シャングリ・ラ》


 宮崎県は日向地域の西都古墳群、全古墳群の地下全てから飛び立った50メータ〜数100メータの宇宙船、そして地下深くから超時空要塞 天の鳥船アマノトリフネ 全長4000メートルが月の裏側に集結していた。

 全砲門の照準を背にちるなはエンペラー星人との誤解を解き、ミューラ オウジこと香久耶鈴之助カグヤスズノスケをエンペラー星人に無事に返す。

 古よりの知り合いであるエンペラー星人に安堵の地としてシャングリ・ラ渡航をちるなは提案していた。



 場面はシャングリ・ラ上空。

 時間13時。


 僕とちるな、犬千代丸様と小太郎は劔山脈のシャングリ・ラ入口の高台の崖に立っていた。

 他のみんなはエインセルの亜空間に退避している。

 ちるなの小脇にはフランス人形が抱えられている。

 不測の事態時は亜空間に退避できるように。


 シャングリ・ラ上空はいつの間にか分厚い雲霞に覆われている。


 雲霞の下部分に大小様々な円状の膨らみが出て来る。

 膨らみは熟した実がたわわに成って垂れ下がって来るようにどんどん雲を引っ張りながら垂れ下がる。

 やがて〈ポン〉と雲の皮膜から中身が弾け出る。

 出て来たのは円盤。

 〈チカチカ〉と光を明滅させながら大小様々な円盤が雲の真下に浮いている。

 やがて雲霞全体が下に膨らみ始める。

 雲がその重さに耐えれずに〈ボワン〉と弾け雲の膜が消し飛ぶ。

 同時に雲霞と同じ大きさの円盤が現れる。

 超時空要塞 天の鳥船アマノトリフネ 全長4000メートルが現れる。


 天の鳥船の一番端は劔山脈のシャングリ・ラ入口の高台の崖の間際まで届く大きさ。


 〈キーンキーン〉

 《チルナ サマ トウチャクイタシマシタ》

 《チルナ サマ トウチャクイタシマシタ》


 〈キーンキーン〉

「もーピタゴラスぅ、僕が喋るんだよ!ちるなおねーちゃん、来たよ!」

「ね〜ちるなおねーちゃん〜」


「横に居られるのは尊きお方様ですね!」

「初めまして!香久耶鈴之助カグヤスズノスケです」

「ちるなさんにとてもお世話になりました」


 エンペラー星人の王子が地球からシャングリ・ラにやって来た。

 その日は、僕に弟分が出来た日でもあった!

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