第38話 朝の始動。
布団で頭の整理をしていたので目は既に覚めている。
朝ご飯は食べないので身支度すれば出掛けることができる。
学生の時は寮生活で3食キッチリ食べていたので頗る健康体だったが今は調子は崩しがちだ。
朝の限られた時間に食事を摂る事を可能としていたのは規則正しい規律、食堂のおばちゃんの準備、その環境下を潤滑に運営しようとする学生達の意志。
雑多な社会へと出た身だからそのパーフェクトな環境を望むべくも無く有り体の環境に甘んじるしかない。
有り体の環境はそれを意思を持ち整えてくれる先人やその時々の人々の賜物で形作られる。
より良き有り体を知るならばその形に今に甘んじて諦めるよりはそれをまた再現するべく励むべきだろう。
〈うー〉と伸びをして起きる。
令和の世では僕は会社員。
糧のために働かなきゃいけない。
玄関から最寄り駅まで3分、短い道程の途中で待ち人一人。
少し離れた電柱の上に大きな鴉が一羽。
僕の姿を認めると自転車置き場のフェンスの上に舞い降りてくる。
「おはよう、ちるな」
ちるなは時空を渡る力を持つ稀有な存在。
僕が時空を超えてティルナノーグへと渡っている事を令和世界でも自覚させてくれる唯一の存在。
夢現ゆめうつつではない証拠。
ちるなに目配せ挨拶して駅に入る。
いつもの電車待ちの人等。
乗る位置どりもほぼ同じ。
入ってくる電車は開閉はボタン式。
先頭の人がボタンを押すとは限らず、いつも気づきが高い人が率先して押す。
ドアが開くとドア付近に団子状態。
空いている奥側に詰めようともせずに押されて嫌な表情。
降りるのに早々時間をシビアにするものでもないのに何故か団子。
背中のリュックもボーッと背負って二人分のスペースを取って押されて嫌な顔。
不必要にカバンを人と接触する側に押し立てて奥に入る事を阻む女性。
皆んな目が魚の目だ。
魚の目が大方の中にキビキビと動く人、気遣いする人が少人数居る。
その人の気づきの力だから年齢は関係なく生まれながらの素養だと感じる。
素養が無い者を補うには規範が必要となる。
老いてこの体たらくだともう手の施しようは無くなる絶望仕切りとなるね。
ティルナノーグに住う皆んなには一定律の規範は用意すべきだろう。
こんな乱れた状態にならない様に魚の腐った目の社会となる。
通勤電車の中にも参考になる情報は沢山ある。
会社に着くと親しい仲間とそうで無い仲間が様々に居る。
これは学生の時と同じ教室の中に似ている。
ただ大きく違う点は気心を通じようとする心があまりにも薄く友情というものが無い世界であるという事。
人は思い思われその深さは都度違うとしても友情という形を形成する。
同じ人間としての通じ合いが無い世界。
我が身だけを考え人を利用する事しか考えていない。
会釈をしても返さない者らの廊下をフロアへと歩く。
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