第28話 話しかけてくる思念。
「と言う訳で土御門の彼等は麻呂の臣下となったんだよ!」
「分かった〜?」
流入する思念が月詠に問いかけて来た。
「麻呂の大方の素性は分かって貰えたかな」
「さすれば、このまま真っ直ぐ階段を下りて突き当たりで左に曲がると終点だよ!」
土御門家の古文書に凄腕の逸材が多く輩出した時代があり、その中の5天王と呼ばれた天才肌の土御門が葛城山で消息を断った記録が残っている。
当然、月詠もこの古文書の話は知っている。
知っているどころか月詠も同じく葛城山で洞穴を見つけてこの冥府へとやって来ていた。
力を秘めし者の望みはいつの世も同じなのかも知れない。
ただ生きるのか、力を発揮出来る場を求めるのか。
得てしてその者等は孤高で群れずに口にせずに黙々と歩み続ける。
孤高を極めても1人では活用の場は見出せない。
ただ力を発揮出来る場を見出すのは非常に難しい。
力を欲する場である環境、司る者の実践力を伴った心ある理解力幾つかの要素が揃わねば実現しない。
ある種極めた者らだけが集まる中の理想的な世界。
その世界に出逢うには待つよりも動く。
探し求める冒険に出るべき。
そして冒険に誘われて月詠もこの地に導かれた。
突き当たりを右に曲がる。
その先は眩いばかりの金色の光が迸る真昼以上に明るい世界だった。
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