第29話 ようこそ。

「ようこそ」


 階段を下りきると〈ばーん〉と黄金に輝く空間が開けていた。

 どれ位の広さだろう。

 平安京の御殿位の奥行きと天井も見上げて目を凝らさないと天井板が見えない位に高い。

 壁は一直線に正四角形を形取る様に綺麗に整形されている。


 ただ、何も無い。

 金色の光に照らされて暗がり一つ無い。


 月詠つくよみは金色の御殿の床に足を着地させる。

 床は普通に土の地面だ。

 金色に照らされている。

 その光は部屋の中央から注いでいる。


 中央に何か居る。

 眩い光の中にシルエットが黒い影で浮かび上がる。

 その姿は人では無いのが分かる。

 巨体だ!

 複数体居る。

 手が複数ある。

 蜘蛛だ!

 土御門家のもう一つの姿は蜘蛛。

 月詠には古文書のあの5天王だと分かった。

 近ずく事にする。


 蜘蛛等の影に入るように進むと黄金の光の眩さも和らぐ。


 向こうも月詠に気が付いてこちらに身体を向ける。

 そのシルエットは5人。

 古文書と符合する。

 思念が来る。


「お1人ですか」

「よくぞ此処まで辿り着かれました」

「我等と同じ血の縁を感じまする」

「さ、此方へ」


 と誘う姿は蜘蛛だった姿を一変し雅やかな平安若公家のしゃなりとした出で立ち。

 容姿も透き通るような色白で端麗な顔立ち。


 5人の若公家の背後から放射する黄金の輝きといよいよ対面する時が来た。


 5人の公家は誘う様に道を開ける。


 その先、部屋の真ん中に位置する場所にポツンと置かれた御影石のテーブルに寄り掛かるオケラが居た。

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