第27話 土御門一族。

 〈シュルシュルしゅルルル〉

 〈シュルシュルしゅルルル〉


 いきなり現れるのはびっくりでごじゃるが、来るのがありありと観えるのも怖いものでごじゃる。

 漆黒の闇の中に迫り来る巨大な蜘蛛。

 絶体絶命の窮地でごじゃる。

 藁をも掴むで全神経精神を集中して両の手の巨大スコップを縦に構え大きく左右に開き壁の土中に逃げ込む動きをとる。


 〈ギャン!バリバリバリィィ〉

 と今まで聴いたことのない音が響き渡る。

 開いたのは土壁じゃなく朱色と藍色が渦巻く空間。

「エっ!」


「おおおおお」麻呂の背後からも驚愕した声がした。

 振り向くと蜘蛛がいた。

 人型で2メータ近くはある蜘蛛が立っていた。


 蜘蛛は麻呂が振り向くのと同時に跪いて首を垂れ礼をとった。

 よく見るとその背後にも2体の蜘蛛が跪いて首を垂れている。


 巨大な蜘蛛人間、一体何者?


 訝しんでいるのが分かったのか、

「お許し頂けるなら我等が素性をお話ししても宜しいでしょうか」と口を開いた。


「良かった、説明してくれるの!麻呂も助かるでごじゃる」

 とすかさず本音で応えてしまう。


「では、我等は帝の陰陽庁に所属します土御門家の陰陽師で御座います」

「今般、葛城山の洞穴で黄泉へと通じる門を発見しここに罷り越した次第」

「葛城山の洞穴は土御門家に伝わる伝承秘録に記された黄泉への門とその黄泉に住まう大賢者様の話」

「我等は葛城山の洞穴を見つけ出し黄泉にて大賢者様を探すしお仕えするべく旅をしております」

「今まさに空間の門を開かれたそのお力、あなた様は大賢者様」

「行成で不躾ですが我等を臣下の末席にお加え頂けないでしょうか」

「我等土御門家の暗部隊、日々尋常ならざる鍛錬を重ねておりますが帝に何の貢献の機会無く鍛錬だけで消える身です。我等は暗部の中堅となりますが若手も育ったのでただ待つだけの身に甘んじるのではなく実戦に身を投じたく参上致しました」

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