第21話 桃源郷への門。

「それは伝承のどんぐり!」


 何ら特別でないどんぐりをマジマジと見入るいくつもの視線を感じる。


「カッカッカ、ううう〜」


 と空き地を囲む大樹の上より笑い声、泣き声両方が響き渡る。

 見渡すと空き地を取り囲む大樹のてっぺんに紅い道着を着た虚無僧が5人空き地を取り囲む様に立って居る。

 ゆうに30mはあろうかと思われる大樹のてっぺんから紅い道着の虚無僧がすーっと降りて来る。


 紅い虚無僧の一人が右手を挙げると灰色の道着の虚無僧が消え殺気も散った。


 紅い道着の虚無僧等がハラリと舞い降りてちるなの方にゆっくりと歩み寄って来る。


 1m程残し立ち止まり深編笠を取る。

 深編笠の下の頭は既にこうべを垂れており顔は分からない。

 5人とも一様に後ろ髪を束ねて白い和紙で結わえている。

 そのままこうべを垂れたまま、ちるなの手前で片膝をつき礼を取る。


「とうとうこの日が来ようとは、初代よりお待ちして我らで124代目となります。我ら土蜘蛛が御君の身辺警護を承ったのは遠く平安の時に遡りまする。時は経ち初代が御君に仰せつかった君命も代々引き継ぐ巻物に記されており、御君様の警護と彼の日がいつ来ようとも万全を期せる様にと申し繋いでおりました。」


「分かって頂けたようですね。良かった!それでは顔をお上げ下さい。」


 5名の虚無僧のまとめと思しき者が最初に顔を上げると、続けて他の4名も顔を上げる。


 面々何れも公家の様な美白で美形の顔をしている。


 むさいな深編笠を脱いだせいか、格段に美顔が際立ち雅な空気さえ醸し出す。


「これより御君にお目通りを頂くべくご案内致します」と濃い緑のフードの老人に目を向ける。


「城塞はこの先の桃源郷に抜ける地下通路の入り口を守る門となり申す」

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