第20話 どんぐり。

「ほほう、二千年ぶりじゃのう、同じ神気を纏いし者の訪問は」


「で何用じゃ」


「用向き次第では生きては返せぬぞえ」


 と矢継ぎ早に話すと黙りこんでちるなの返答を待つ。


 あ、そうそうこの暗闇から這い上がって来た者の容姿は、

 背丈1m位の濃い緑のフードコートを藁紐で結わえて

 左手に灯籠、右手に熊手を持った。小人の様なお爺さん?

 ※声がお爺さんのようだから。

 フードの中から覗く、異様に大きな黄色い眼光が知性を感じさせる。


「内侍の神ちるなと申します。オケラ様にお逢いしに参りました。」


 ‘オケラ’と発した途端。。。誰も居ない筈の場所に四方八方から〈ゆらゆら〉と殺気を醸し出した灰色の道着を着込んだ円筒の深編笠を被る虚無僧が現出する。


「お主等何者ぞ。御君の存在を知るとは生かすべからず」

「生かすべからず」

「生かすべからず」。。。と四方から呪文の波の様に声が押し寄せる。


 ちるなは臆する事なく、凛とした声音で続ける。

「幾数千年もの間、オケラ様をお守りする土御門の術者殿らとお見受け致します」

「我が尊きお方様に託された怪き者でない証をお見せ致します。」


 ちるなが懐から取り出したのは紫紺の小袋。

 その小袋の結いを外し、中からどんぐりの実をひつ粒取り出して手の平に乗せる。


 〜○〜


 思い出の品を容易く金に換える事を必要以上に宣伝するコマーシャルで空気が殺伐とする。

 結局はブランドを欲する人に金額だけで事を処理して愛しているからと渡す物、物、物の顛末とその人らの哀愁が漂う。

 家の中にブランド品を山積みしている事を自慢とするテレビ取材。

 でも見ている側特に日本人は興味本位に見るけどその影に見える虚栄や虚しさを感じ取っている。

 愛ではなく心底好きな人が関わる物を手にする時、それこそ宝物の輝きを放つ。

 例え、どんぐり一粒であろうとその中に凝縮された想いの核は揺るぎなく、手に持つたびに魔法の様に自身の心に作用する。

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