第19話 エインセルちゃん!何してるの手は動かさないの!放り出すわよ

 木々の中から鳥の群れが飛び立つ。


 無機質なフランス人形の口元がニヤリと形を変える。

「さてとぉ」フランス人形が口を動かさずに呟くと

 〈ムクムク〉とフランス人形が人の大きさまでに大きくなる。

 フランス人形が人の大きさになるに連れそれはエインセルの姿を再生する。

 エインセルに戻ったら、にこやかに微笑みながらちるちゃん出ておいで!

 エインセルが微笑むと彼女の右横に青い渦が現れ、人が通れるくらいの大きさに広がる。

 青い渦の中からちるなが背伸びをしながら現れる。


「良く眠りました」


「わたくしの異空間の揺り籠は癒しの空間でもあるからちるちゃんも

  体力回復して良かったわ。それにちるちゃんの秘密も少し覗けたしねフフ」

 ちるなが現れると空気が一瞬で濃密となる。


 大きな巨石が横にズレ終わると地底に向けての暗闇がパックリと口を開けた。

 湿った空気が暗闇から漏れ出でる。

 それは邪悪、いや、そんな生易しいものではない。

 世の理さえも覆す圧倒的な創世の息吹き。

 〈ゴーーーーーーッ〉と空気の流出が音を伴い轟音となる。

 空気の密度が違いすぎる、暗闇から漏れいでる空気が濃密過ぎて水と油の様に

 剥離するのが目視でも分かる。

 剥離する接点で〈パチパチ〉とスパークする。

 まるで異質な物同士が抗う様に攻めぎあう。

 異質がちるなに近ずいて来る。


 暗闇側に近いエインセルのゴスロリ調のフリルのスカートが異質に触れる。

 ボロボロとスカートの生地が崩壊する


「いけない!下がってエインセル!」

「エインセルちゃん、私の後ろにくっ付いて!」


 異質が接する空気をスパークさせてアメーバの様に迫る。


 異質とちるなの纏う空気が接した。

 蛍光色の黄緑色の閃光が瞬き目が眩む。

 そして消える。

 濃密なアメーバの様な区切りも無くった。

 無くなったのではなく、ちるなの纏う空気と融合。。。

 同質、ちるなの纏う空気と同質。

 空気の区切りがちるなの後ろの空気に境界が延びる。

 エインセルはちるなの空気の纏の中。

 恍惚の表情でちるなの背にぴったりと、背後から回した手がちるなの胸に届くや。。

 手をもぞもぞと動かす。


「エインセルちゃん!何してるの手は動かさないの!放り出すわよ」〈パシッ〉


「エヘヘ」エインセルは手を引っ込める。


 そうこうしてる間に暗闇から何者かが地上へと登って来た。

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